機械学習(ML)が自社にもたらす機会を、市場の喧噪(けんそう)に惑わされずに見極めるにはどうすればよいのだろうか?
人工知能(AI)や、AIによる業務変革の可能性については聞き飽きたという人もいるのではないだろうか。しかし、市場の喧噪とは別に、AIによるメリットを享受するための方法に目を向けるべき確固たる理由はいくつも存在している。
まずAIという用語に背を向けることが、喧噪の起こっている理由を知り、喧噪のなかから有益な情報を選び出すための最初のステップとなる。「AI」は、知性ある機械をどのようにして開発するかという研究に専念する学術分野の名称だが、その大まかな定義ゆえに、あざといベンダーが売り文句にAIという言葉を入れ、レガシーソフトウェアをリブランディングする余地が残されている。
ウォーリック・ビジネス・スクールのアソシエートプロフェッサーであるPanos Constantinides氏は「あまりにもさまざまなものごとをAIと称しているところに喧噪の生まれる余地がある」と述べ、「この喧噪は、AIの意味するところが明確でないがために生み出されている」と続けた。
このような混乱を避けるために、より具体的な表現を用いるのがよいだろう。その表現とは、現代のほとんどのベンダーがAIについて語る場合に意味しているところのMLだ。
MLはAIの一分野であり、プログラマーが記述したソフトウェアの通りにコンピューターを動作させるのではなく、大規模なデータを分析させることで、さまざまなタスクの遂行方法をコンピューター自らに学習させるというものだ。
MLに対する関心は、コンピュータービジョンや音声認識、自然言語理解といった分野における最近のブレークスルーのおかげで飛躍的に高まった。こうした進歩に大きく貢献したのが、ディープラーニングといった、機械による学習を実行する新たな方法だ。そしてこれは、最近のプロセッサー性能と、企業が収集できるようになった大規模なデータによって可能になったものだ。
MLにより、つい最近まで手作業に頼っていたさまざまな仕事の自動化が理論上は可能になる。例えば、カスタマーセンターへの問い合わせの取り扱いや、バックオフィスの事務作業、そしてゆくゆくは(少なくとも高速道路のような整備された道での)自動車の運転などだ。
しかし現状を見た場合、多くの企業はMLを活用したシステムの本番導入段階には遠く及んでいない。O'Reillyの「AI Adoption in the Enterprise」(企業におけるAIの採用状況)という調査レポートでは、業界によってAI利用の段階が大きく異なっているとはいえ、75%近くの回答者が「AI」を評価中、あるいは「AI」をまだ利用していないと答えている。
提供:O'Reilly