骨伝導で若年層の難聴リスク低減--ものづくりベンチャーがクラウドERP導入の理由

藤本和彦 (編集部)

2019-04-12 07:00

 「全ての人と音をもっと良い関係に」をミッションに掲げ、独自の骨伝導(bone conduction)デバイスを開発・製造するものづくりベンチャーのBoCo。近年、若年層でスマートフォンをはじめとする電子機器による聴覚障害のリスクが高まっており、鼓膜を使わない骨伝導技術を活用することで、そうした社会問題の解決に挑んでいる。

 「2015年3月に世界保健機関(WHO)が難聴リスクについて全世界に警鐘を鳴らした。実際、12~35歳の若者の2人に1人が難聴のリスクを抱えている」(代表取締役社長の謝端明氏)という。スマートフォンや携帯音楽再生機の普及により、イヤホンやヘッドホンで大音量の音楽を聴く機会が増えたことが原因とされている。

BoCo 代表取締役社長の謝端明氏
BoCo 代表取締役社長の謝端明氏

 耳を酷使すればするほど鼓膜に負担がかかり、聴力の低下を引き起こす。「従来、難聴は高齢者に多い症状だったが、最近では若年層にもリスクが広がっている」(謝氏)

 そこで同社が目を付けたのが、骨伝導技術の活用だ。音の増幅によって鼓膜を振動させる従来の音響技術とは全く違う仕組みのため、鼓膜を使わずに音を聴くことができる。「難聴リスクの回避に貢献できる」と謝氏は強調する。

 同社の中核技術は、特許を有する直径10mmのデバイス。4~4万Hzという広い周波数帯域の音を再生できる。元ソニーのエンジニアが多数在籍し、製品開発を進めている。専用の製造装置も自社開発という。

経営の可視化でクラウドERPを導入

 BoCoでは、設立当初からグローバルな事業展開を進め、既に中国と韓国に子会社を設立。台湾と香港での販売も開始する。北米と欧州への進出も計画している。

 「企業の競争力には表と裏がある」と謝氏は語る。表の競争力は利益、売り上げなどの数字で見える経営情報。裏の競争力は、意思決定の速度や精度、知的財産、組織力など。この表と裏を支えるのがIT基盤であり、経営の可視化によって会社の急成長を後押ししている。

 「経営状態が見えない状況でのかじ取りは無理」と謝氏は指摘する。一方で、BoCoのような新興企業にとって、オンプレミス型ERP(統合基幹業務システム)のような大規模なシステム投資をする余裕はない。そこで、IT資産を持たずに、成長に合わせて機能を拡張しやすいSaaS型ERP「NetSuite OneWorld」を選択した。

 NetSuite OneWorldは、複数の国や地域にまたがるERP/財務会計、CRM(顧客関係管理)、マーケティング、Eコマースなどの業務を統合的に運用できるクラウド型業務アプリケーション。「素の状態で使わせてくれと要求した。機能を組織に合わせるのではなく、組織を機能に合わせるようにした。これはスタートアップだからできることだ」(謝氏)

(取材協力:日本オラクル)

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