インターネットイニシアティブ(IIJ)は4月10日、千葉県白井市に建設していた新たなデータセンター「白井データセンターキャンパス(白井DCC)」が完成したと発表した。5月1日に稼働を始める。IT人材不足や働き方改革に対応するために、ロボットによるデータセンター運用の無人化、自動化に取り組む。
白井DCCの外観。システムモジュール型工法で建設し、倉庫のような形をしている。(出典:IIJ)
白井DCCを新設した理由について、IIJの基盤エンジニアリング本部エンジニアリング事業推進室長を務める久保力氏は「島根県松江市にあるコンテナ型DCでの経験を生かすためである」と述べた。2011年4月に構築、運用を開始した同DCは、IIJが初めて作ったデータセンター。当時は「GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と同等以上のDCを構築、運用する」という目標を掲げており、これまでコンテナモジュールの構築、運用や外気冷却による省エネなど、さまざまな取り組みを行ってきたという。そこで得た知見を生かすため今回、新設に踏み切ったと説明する。白井DCCは、自社サービスの集約拠点として稼働するほか、エンタープライズやデータセンター事業者向けにハウジングサービスやコロケーションサービスを提供していく。
白井DCCの取り組みや特徴を説明するIIJの基盤エンジニアリング本部エンジニアリング事業推進室長を務める久保力氏
主なスペックとして、敷地面積が約4万平方m、最大延べ床面積が約8万平方m、設備収容が6000ラック、最大受電容量が50MWであるとしている。
IIJが考える白井DCCの主な特徴は、以下の3つである。
- 柔軟かつ安価な拡張が可能な施設
システムモジュール型工法を採用したことで、着工から8カ月という短工期、建築コストの削減を実現した。顧客企業が使用する面積、電気容量の規模に応じて、分割ラック、ラック単位、サービスプロバイダー向け専用設計まで対応可能である。データセンターと外部を接続する回線の敷地外からの入線ルートは、異経路3ルートを配置し、利用可能な通信キャリアに制限のないキャリアフリーに対応している。また、天井高が約4.8mのサーバールームには、約2m70cmまでのトールラックを設置し、収容効率を高めることができる - 最新の省エネ方式、省エネ設備を採用
データセンターの消費電力において大きな割合を占める空調設備の消費電力を削減するため「外気冷却方式」を採用している。また、設備内の壁面に設置した空調ファンからサーバーへ冷気を吹き出すことで、従来の吹き出し型より効率的に空調運搬できるシステムを採用するなど、電力効率の最適化を図る。さらなる効率化に向け、空調とITの一体的制御を導入する - ロボットによるデータセンター運用の無人化、自動化
IT人材不足の対策として、フィジカルロボット、ソフトウェアロボットともに運用実証を行う。フィジカルロボットは、ALSOKの警備ロボット「REBORG-Z(リーボーグゼット)」を導入。業務は、来訪者の受付、案内、および屋内外の巡回など。ソフトウェアロボットは、IIJの関連会社であるIIJエンジニアリングがRBA(Run Book Automation)、RPA(Robotic Process Automation)基盤により、入館申請業務、障害発生時の復旧対応など、ITオペレーション業務の自動化を実証する
久保氏は「できる自信があるから施設を作るものの、運用する中で課題は浮き彫りになるものである。その経験を昇華することで、新たな取り組みにつなげていきたい。そのため白井DCはいわば、挑戦の象徴である」と話した。
取材の中で特に印象的だったのは、警備ロボットREBORG-Zである。REBORG-Zは1995年に発売され、今回で11世代目。ALSOKの鈴木一三氏によると、同社は警備員の減少をいち早く想定し、1982年から業務を代行するロボットの研究開発に取り組んできたという。最新版である同ロボットでは「コミュニケーション」「警備」「走行移動」の3つを強化したと話す。例えば、来訪者を案内する際は、自動ドアやエレベーターと連動し、非常時には悲鳴や口論の時に発生する一定の周波数をキャッチすることで、防災センターなどに通報するとのことだ。「全国で数十台が稼働する中で得たノウハウを結集した」と同氏は語る。
ALSOKの警備ロボット「REBORG-Z」。かわいらしいフォルムだが、警備ロボットなので持ち運ばれないよう一体200kgの重さがあるという。
IIJの代表取締役社長である勝栄二郎氏は「インターネットイニシアティブという会社名の通り、われわれには創業から今まで走り続けたという自負がある。今後も業界のイニシアチブを持ち続けながら精進していきたい」と語った。