従業員のエンゲージメントという概念はビジネスの世界で言い古された決まり文句ではなく、その効果が立証されているビジネス戦略となっています。組織とその目標に心から賛同し、取り組む従業員なしでは、企業がその競争力を維持することは不可能です。また従業員のエンゲージメントが存在する企業は生産性と収益性においても優れているのです
エンゲージメントの高い従業員が売り上げと利益を拡大する
米国の世論調査会社であるGallupは「従業員のエンゲージメント」について、仕事と職場に積極的に関わり、それについて熱意を抱くとともに業務に専念していると定義しています。同社の最新の2017年版レポートには、会社や組織へのエンゲージメントが高い従業員が存在する企業は、エンゲージしていない、あるいは疎外感を抱いている従業員がいる企業よりも売上高が20%、利益は21%高いことが示されています。
従業員のエンゲージメントはさまざまな形で収益に影響します。たとえばエンゲージメントが高い従業員は欠勤が少なく、17%も高い生産性を示します。The Temkin Groupによる調査では、高いエンゲージメントを示したした従業員には以下の特徴があることが判明しました。
- 病欠が少ない
- 自発的に同僚を助けようとする
- 何か必要なことが生じた場合に残業をいとわない傾向が2倍高い
- リファーラルを多く提供し、採用コスト節約に貢献することが多い
従業員が疎外感を抱くことによるコスト
しかしながら、Gallupの調査では、グローバルで行った回答のうち、従業員の51%以上は自らの職場にエンゲージメントを感じていません。従業員へのエンゲージメントを積極的に行わなかった場合、企業には生産性や職場での熱意の低さにより巨額の損失が生じ得ます。
LinkedInの調査では、疎外感を抱いている従業員は生産性の低下を通じ、自らの給与の34%に相当する損害を会社に与えています。また疎外感を抱いている従業員の場合、そのネガティブな姿勢が他の従業員にも拡がる可能性がより高くなっています。このような従業員はあまり仕事をせず、他の人々にも悪影響を及ぼしているにもかかわらず、雇用側はその給与の全額を負担しなければなりません。
エンゲージメント改善の鍵は職場での適切なツール
従業員のエンゲージメントを高める最も容易な手段のひとつは、明確かつオープンなコミュニケーションです。「Harvard Business Review」誌による2013年度の調査では、会社の戦略やビジネスゴールに関する最新情報を定期的に伝えられることにより、自らが会社にエンゲージしていると感じられると回答者の70%以上が述べています。
その反面、多すぎるコミュニケーションは生産性を損ないます。従業員は平均して1日に200通のメールを受け取り、それらを読んで返信するために2時間半を費やしています。従業員がエンゲージした状態を維持するには、その仕事に直接関連した、タイムリーかつパーソナライズされた情報提供が必要です。
- 永長純(ながおさ・じゅん)
- シトリックス・システムズ・ジャパン セールス・エンジニアリング本部 本部長
- 前職ではアジア太平洋地域を担当し、様々な国の企業にビジネスやコスト、人の観点から提案を実施。その経験を生かし、日本企業が国内とグローバル競争で勝つためにワークスタイル変革を含めたソリューションを提供するのがミッション。
- 小林伸睦(こばやし・のぶちか)
- シトリックス・システムズ・ジャパン アジア・パシフィック・ジャパン事業推進本部 ソリューション・推進マネージャー兼エバンジェリスト(総務省テレワークマネージャ)
- イベントやセミナーなどの活動を通して働き方やワークスタイルの変革を推進しながら、「デジタルワークスペース」ソリューションのエバンジェリスト活動を行う。新しいテクノロジで市場の開発を目指す。