エンタープライズAIの隆盛

「生成系AI」が業務の効率性を上げる--文書生成の自動化で創造力を拡張

中西崇文 (武蔵野大学准教授) 2019年04月30日 07時00分

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 オフィスでの文書作成は、IT化によってだいぶ楽になったものの、いまだに業務の中で負荷の大きい作業の一つかもしれない。その作業の全てをなくそうとしても無理な話だ。“言語化”は暗黙知を形式知に変化させるのに非常に有効な方法だし、コミュニケーションの基本は言語であるが故に、他人に情報を伝えるためにはやはり文書にする必要がある。それでもなお、文書作成の負荷軽減は重要な課題となっている。

 そうした背景から、「生成系」と呼ばれる人工知能(AI)が注目を浴びている。文章、音楽、画像、動画など、何らかのメディアコンテンツを自動で生成するのが特徴。これを文書作成に応用する事例が増えてきている。

 今後、生成系AIが業務に導入されるに従って、文書作成の負荷を大きく軽減し、創造的な業務により多くの時間を割けるようになるだろう。ここでは、生成系AIが業務に導入される未来を描きたいと思う。

認識系AIから生成系AIへ

 現在のAIブームで最初に注目されたのが画像認識技術ではないだろうか。入力された画像に写っているものが何かを「認識」する技術だ。その後、顔認識や音声認識などの認識技術が注目されてきた。これらのAIを「認識系AI」と呼ぶことにする。

 認識系AIが活躍するのは、大量のデータが生成され、それらのデータを瞬時に判別しなければならないような現場が多い。例えばIoTの領域では、現実世界の状況をデータで取得する際に、その意味を判断する機能として非常に重要なエンジンと位置付けられる。スマートファクトリーなどのインダストリー4.0の流れも、IoTと認識系AIの組み合わせが基本となっている。

 近年それとは別に、データやコンテンツを自動で生成するAIが注目されている。面白い事例としては、まるで実在するようなアイドルの顔画像を自動生成するAIが記憶に新しい。このようなAIを「生成系AI」と呼ぶことにする。

 今では、画像だけでなく、音楽や動画の生成系AIも生まれている。ちなみに筆者は、音楽を対象とした生成系AI、具体的には楽曲を自動で生成するAIの研究を進めている。

 生成系AIは人間が詳細を指定しなくても、現実にあり得そうなコンテンツを自動生成することから、創造性を生かす現場においてパラダイムシフトになる可能性がある。今後は、生成系AIが生み出すものを選択・編集しながら、より高次の創造性を発揮して作品を仕上げていく必要があるだろう。また、人間の創造力を生かすためには、生成系AIと協調していかなくてはならない。

ニュース記事を生み出す生成系AI

 さらに、ここ数年で記事執筆に生成系AIを利用する事例が生まれてきている。The Washington Postは、2016年のリオデジャネイロ五輪において、報道の一部に「Heliograf」と呼ばれるAIを使っていたことを明らかにしている。試合の結果や日程を伝える短文記事を自動で生成していたのだ。

 こうした生成系AIの利用は、人間の記者や編集者を置き換えるものではない。結果速報や試合日程といった定型の記事を公開する手間を省くことで、詳細な解説や分析のある記事を執筆する時間を作り出し、その創造性を生かすことを目的としている。

 日本でも、例えば、日本経済新聞社、言語理解研究所、東京大学松尾研究室が共同研究を進め、完全自動の「決算サマリー」をリリースしている。これは、上場企業が発表する決算データを記事化し、配信するサービスである。「日本経済新聞 電子版」や「日経テレコン」などでコンテンツを公開している。

 また中部経済新聞は、2016年に創刊70周年を迎えるに当たり、AIが生成した記念記事を掲載している。このAIはデータセクションが技術提供を行っている。

 こうした流れの中で、生成系AIの精度が飛躍的に向上してきたという話もある。AIを研究する非営利団体のOpenAIが「GPT2」と呼ばれる文章自動生成システムを開発した。ところが、GPT2は非常に優れているため、悪用された場合のリスクを鑑みて、技術的な詳細の論文公開を延期している。実際の性能はこちらの動画で公開されている。Brexitに関する記事を作成するに当たり、人間が最初の数行を入力するだけで、あとはGPT2が文章を自動生成してくれるのだ。

 もちろん、こうした技術が悪用されればフェイクニュースや情報操作のまん延など、社会に大きなダメージを与えるものになるかもしれない。一方で、これらの技術を日常の業務や生活に応用することができれば、非常に効果的なツールになっていくだろう。

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