カギは理念と労使関係--アリーナ構想を進める千葉ジェッツ“ハッピー”の秘密

藤代格 (編集部)

2019-04-28 09:00

 プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」に千葉県から唯一参加する「千葉ジェッツふなばし(千葉ジェッツ)」。今でこそ毎年優勝争いを繰り広げる人気チームの一つだが、創立当初は「潰れるかどうかの瀬戸際」という時期もあったという。“ビジネスである以上、利益の創出、還元は産業を問わずに必須”と語る代表取締役の島田慎二氏に、前編に続き浮上までの具体的なプロセスを伺う。

理念をとにかく徹底

代表取締役の島田氏
代表取締役の島田氏

 考え方を浸透させるための第一歩の活動として、経営理念を設定したという。千葉ジェッツの場合は、「千葉ジェッツふなばしを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」というものだ。「会社の最上位概念で、何かあった際に立ち返るべき場所。ビジネスである以上状況に応じてジャッジが必要な場面が発生する。立ち返るべき場所がないと都度違う判断になりかねない」(島田氏)。社長になったその日に、スタッフや選手など全ての社員を集めて説明したという。

 工夫点として、掲げるだけで形骸化するといったことが起きないよう、日常的に“ハッピー”を引用しているという。「例えば、“プライベートの時間は不要か”“たばこを業務中に吸っていいか”などの場合に引用し、“それでみんなハッピーか”で判断する。反発があったとしても、わかってもらえる」(島田氏)

 ビジネスに直接つながるものに限らず、残業をした場合の家族の気持ちなど、全ての際に活用しているという。「情報共有など、ITツールを入れて効率化していることは多く、絶対に必要ではある。しかし、意識ややり方、仕事の優先順位の付け方、整理整頓など“仕組み”があった上でのこと。あくまでITはツールで、メインではなく、サポートするくらいのイメージでいい」(島田氏)

目指すは“取り巻く全て”のハッピーだ(出典:千葉ジェッツふなばし)
目指すは“取り巻く全て”のハッピーだ(出典:千葉ジェッツふなばし)

 立ち返るべき理念、適正なジャッジと同様に重要な点として、労使の信頼関係も挙げている。「食い違った際には説明責任をしっかりと果たす。会社の方針やルールなども決定事項として降りてくるではなく、しっかりと意図までを伝える。いずれにせよ受け入れるとしても、受け入れ方が変わる」(島田氏)。島田氏は、選手同様に経営層もファイターと捉えているという。「ファイターは一歩間違えたときの空回りが起きやすく、労使関係が構築できているかが重要。構築には努力が必要で、一つ一つに愛情を持って対応しなければならない」(島田氏)

 “経営理念の設定” “マインドの浸透””労使関係の構築”これらを大きな柱に、島田氏は千葉ジェッツを改革していく。“資金収集”“チーム強化”“集客”を経営を再建するための“ホップ、ステップ、ジャンプ”として設定し、まずはビジネスを黒字化したという。「(2012年の就任)初年度は半年だったため、“ややトリッキー”な手を使ったが、2年目は年間を通した目標設定、会社としての仕組みづくりなど、社員と二人三脚で達成した。みんなで頑張った上での2年連続の黒字化で、初めてのボーナスを喜んでもらえことを今でも覚えている」(島田氏)

 従業員だけでなく、チームの強化という観点でも還元を始めている。「ビジネスとして利益を出し、従業員や選手、ファンへ還元する。喜んでもらうことで、さらなる利益を生み出す。そういった循環しか考えていない。今でもエモーショナルな感覚はゼロ」。自身をドライすぎるくらいドライと表現する島田氏は、勝利の際に見せる笑顔を忘れているかのように説明する。

日本代表でも活躍する富樫勇樹。強い選手獲得も還元の一つだ(出典:千葉ジェッツふなばし)(C)CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:Junji Hara
日本代表でも活躍する富樫勇樹。強い選手獲得も還元の一つだ(出典:千葉ジェッツふなばし)(C)CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:Junji Hara

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