自動化の実現には人が必要になるというパラドックスがある。大企業は、人工知能(AI)や機械学習(ML)、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)を通じて自社プロセスを可能な限り自動化しようと積極的な取り組みを続けている。そして自動化によって、プログラミングから訓練に至るまでの新たなキャリアに向けた機会が訪れる。また、自動化によって従業員はよりレベルの高い作業に従事できるようになる。しかし、大局的な観点から影響をあらかじめ熟考せずに社内に導入することはできない。
これが、4000人の従業員を対象にAutomation Anywhereが実施した調査の結論だ。詰まるところ、従業員らは自動化を恐れてはおらず、どちらかといえばおおむね歓迎している。また、彼らはAIが自らの仕事をどのように改善してくれるかということについて強い興味を抱いている。回答者の4分の3近く(72%)は、テクノロジーが自らの仕事を奪うのではなく、共に仕事をする仲間だと考えている。これとはまったく逆の考えを抱いている人々は8%しかいない。
さまざまな自動化やAIを試してみる機会を会社が与えてくれるのであれば、長期的に見て自らの生産性が向上するだろうと回答している従業員は過半数(57%)に達しており、逆の意見はわずか16%だった。
現在のところ、従業員の38%は自らの仕事を実行するうえで何らかの自動化を利用しており、この数値は今後も上がり続けると考えられている。
この調査を率いたロンドン大学のChris Brauer氏によると、自動化の鍵は、人間から仕事を奪って機械で置き換えていくのではなく、人とデジタルワーカーがお互いのスキルを補完し合いながら共に働いていく方法を見つ出すところにあるという。同氏は「こういったことに成功した企業はパフォーマンスのレベルを28%向上させているだけでなく、職場をより『人間的』にする要素に関するスコアが33%高いと判明した」と指摘した。
調査レポートには「自動化によって、人は単純な作業やプロセスを機械に任せられるようになる結果、仕事がより人間的なものになる」と記されているとともに、これにより「時間やコスト、取り組み、知的労働といったリソースが解放され、スキルの開発や、新たなものごとの学習、創造的思考、複雑な問題の解決、顧客とやり取りする時間の増加、事業の開発を通じて、人というワークフォースに再投資できるようになる」と記されている。