「AIエンタープライズにはデータ戦略が欠かせない」IBM最高データ責任者

阿久津良和

2019-04-25 06:45

 IBMは現在、企業戦略の中核に人工知能(AI)を位置付けているが、同社のグローバルで最高データ責任者(Chief Data Officer:CDO)を務めるInderpal Bhandari(インダーパル・バンダーリ)氏は同社の“AIエンタープライズ”戦略について、現在の形を実現するまで約3年間を要したという。日本IBMが4月24日に開いた記者会見で説明した。

 Bhandari氏は「テクノロジーのみならず、ビジネスワークフローや社風を変えるアプローチ、すべてを含んだ“青写真”を提供する。顧客はそれを参考にAI企業への移行を始めてほしい」とIBMが自らショーケースとなって大企業のAI活用を促していく方針を明らかにした。

IBM グローバルCDO Inderpal Bhandari氏
IBM グローバルCDO Inderpal Bhandari氏

 1990年代はリサーチスタッフとしてWatsonの開発に携わっていたBhandari氏だが、2015年12月にIBMへ再入社し、グローバルCDOに就任。IBMのデータ戦略策定やIBM社内のコグニティブエンタープライズへの変革を牽引してきた。そのBhandari氏は「IBMがAIエンタープライズ企業に転換する基礎部分として、データ戦略が欠かせなかった」と説明する。

 Bhandari氏はデータ分析のパートナーシップ構築や人材育成を通じた「明確なデータ戦略の策定」を第一義にし、「最も重要なCDOの役割。6カ月に成し得ないと、組織がCDOを飲み込んでしまう。目先のプロジェクトに関する協力を求められ、全体的な戦略を見失う」と語る。

 「データ戦略とはビジネス戦略をサポートする存在。そのビジネス戦略は企業の収益化方法ではなく、意思である。弊社はメインフレームやソフトウェア、クラウドなど多様な収入源を持っているが、弊社幹部は『AIやコグニティブコンピューティングを通じてマネタイズを目指したい』という。そのビジネス戦略をCDOをとして理解し、合致するデータ戦略の構築が必要だ」とBhandari氏はCDOの役割を説明した。

 IBMのデータ戦略がAI企業に至る道筋であり、その姿を顧客にショーケースとして見せるのが、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)を起こす最善策だとBhandari氏は語る。「IBM自体がAI企業となり、顧客に紹介する。(顧客の)皆さんをAI企業に導く支援をしたい」(Bhandari氏)

 具体的なアクションとしてIBMは、ディープデータやアナリティクスパートナーとのパートナーシップ構築と人材育成の2つを掲げる。「データサイエンティストやAIの専門家、データエンジニア、深層学習に特化した方々。だが、現実には(該当する人材は)多くない。社内教育はもちろん、社外から採用するアクションは(CDO着任)初日から着手しなければならない」(Bhandari氏)

 同社は人材確保について優先順位の高い問題と位置付け、学生に対して高度なITスキル、データサイエンスやAI知識を身に付ける「P-TECH」プログラムを提供している。「課題に対処するにはすべてのレベルでコミットしなければならない」(Bhandari氏)と人材確保問題がグローバルレベルで起きていることを強調する。

 他方でIBMはデータガバナンスの強化にも取り組んできた。「大企業は構造化データや非構造化データなど大量のデータを抱えている。ガバナンスを利かす適用範囲を理解することで柔軟性につながり、従業員をエンパワーできる。だが、中央集権的に行うべきだ。部門ごとに(データプールが)異なってはいけない」(Bhandari氏)とサイロ化の危険性を指摘する。

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