こうしたサービスには音声認識やコンピュータビジョン(物体や顔、感情などの認識)、自然言語処理(人間の言語を解釈する能力)、センチメント分析、データ予測、翻訳が含まれる。またこれらサービスは、チャットボット作成キットや、小売業者向けのレコメンデーションエンジンといった、高次のより洗練された製品にまとめ上げられている場合もある。
オンデマンド型のサービス以外にも、「Amazon Web Services」(AWS)や「Google Cloud」「Microsoft Azure」を含む大手のクラウドプラットフォームはそれぞれ、自社のクラウドインフラを用いてMLモデルの訓練や実行を可能にするサービスも提供している。顧客企業は、必要に応じて任意のデータでこれらのモデルを訓練できるが、該当分野の専門家と共同で作業するデータサイエンティストを社内に確保する必要があり、IT部門はMLをどこで利用するのが最も効果的かを決定するとともに、データの準備と、MLモデルの訓練/配備に向けたプロセスを設計する必要がある。
クラウドプラットフォームプロバイダーは既に、MLモデルの訓練を部分的に自動化する製品の提供を開始してもいる。ただし、こうした製品はデータサイエンティストの置き換えを図るのではなく、彼らのスキルを伸展させることを目的としている。また、これらの製品はドラッグ&ドロップ形式のツールやその他の簡素化によりMLモデルの訓練プロセスを効率化する。具体的なサービスとしてはMicrosoftの「Machine Learning Studio」やGoogleの「Cloud AutoML」、AWSの「AWS SageMaker」が挙げられる。一方、MLモデルの訓練のためにデータを準備する作業(例えば、コンピュータビジョンというタスクにおける画像へのラベル付け)はしばしば、「Amazon Mechanical Turk」といったクラウドソーシングサイトを通じてフリーランサーに外注される。
社内でMLのシステムを構築する場合、訓練プロセスには2~3カ月以上の集中的な作業が必要となることを見込んでいれば、安価とまでは言えないが、クラウドサービスを利用するよりも低いコストで済む可能性もある。
ニューラルネットワーク(人間の脳にヒントを得た、MLの要となる数学モデル)が極めてシンプルなものでない限り、訓練にはある程度の性能を有したGPUを用意する必要がある。GPUは、大量の行列乗算を並列実行する能力を有しているため、ニューラルネットワークの訓練時に欠かせない処理の高速化を支援するうえでたいていの場合、不可欠なものとなっている。