これらの他にも、Microsoftの「Microsoft Cognitive Toolkit」(CNTK)や、「MATLAB」「Apache MXNet」「Chainer」「Keras」など数多くの選択肢がある。ML用のフレームワークとコンピューターハードウェアの双方の進歩によって今では、企業ネットワークのエッジ部分に配置された安価で消費電力の低いコンピューターに訓練済みのMLモデルを配備することで、IoTセンサーによって収集されたデータに基づくパターンの検出や、アクションの起動といった目的でMLモデルを容易に利用できるようになっている。
シンプルな第1歩
企業がMLを使って実施できる手始めのプロジェクトはどのようなものだろうか?Constantinides氏のお勧めは、業務のクリティカルではない分野から手を付け、徐々に規模を拡大していくことだという。
プロジェクトの性格は業界によって大きく変わってくるものの、Constantinides氏はさまざまな業界におけるシンプルなプロジェクトの例として、コンタクトセンターのチャットボットを挙げている。
このようなチャットボットは、顧客が繰り返し尋ねてくる簡単な質問に対して受け答えをし、質問が複雑な場合には人間のオペレーターに対応を任せるようになっているが、自然言語処理の採用により、従来のルールベースのチャットボットよりも複雑なやり取りが可能になる。
Constantinides氏は、「ほとんどの企業は、コールセンターのサポート業務を自社のコアコンピタンスではない二次的な機能に据えている」と述べ、「つまりこれは、低リスクのユースケースだと考えられている」と続けた。
そこを出発点にして、MLを活用した他のサービス、すなわち顧客とのやり取りで得たデータを用いて他の製品やサービスを勧めるというレコメンデーションエンジンなどに手を広げていけるはずだと同氏は付け加えた。
「そうして規模を拡大していけるはずだ。顧客とのやり取りを通じて得られた顧客データを元に、さまざまな予測を立て始められるようになる。そしてさまざまな質問を投げかけ始められるようになる。真っ先に出てくるのは『他にもこういった製品はいかがですか?』、あるいは『このサービスに満足しているのであれば、こういったサービスはどうでしょうか?』といった質問になるだろう。このようにして顧客サポートからダイナミックマーケティングに展開していくことになる。最初のユースケースを活用するというのはこういうことだ」(Constantinides氏)
同様のコンテキストにおいて、ForresterのGownder氏も最初のプロジェクトを特定の作業に絞り込む重要性を強調している。先のレポートの中で同氏は例として、ヘルスケア分野を手がけるあるIT企業が、ガン全般への取り組みといった、範囲が広く管理しにくいテーマではなく、X線医療画像の分析に特化しているケースを挙げている。