日本のエンタープライズセキュリティー市場に進出するイーセット

大河原克行

2019-05-09 06:00

 イーセットジャパンとキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、5月8日から未知の高度なマルウェアを検出し、端末を防御するクラウドサービス「ESET Dynamic Threat Defense」と、端末上の疑わしい動きを分析してサイバー攻撃による侵害の有無を可視化するエンドポイント検知対応(EDR)製品「ESET Enterprise Inspector」を発売する。

 ESETは、2018年9月にキヤノンMJとの合弁で日本法人のイーセットジャパンを設立。これに合わせてエンタープライズ市場への本格展開を開始しており、今回の新製品は、その取り組みをさらに加速するものになる。来日したESET プリンシパルプロダクトマネージャーのMichal Jankech氏と、イーセットジャパン カントリーマネージャーの黒田宏也氏、キヤノンMJ エンドポイントセキュリティ企画本部長の山本昇氏に話を聞いた。

--ESETは2018年にエンタープライズセキュリティー分野に本格参入することを発表し、「ESET Security Management Center」を投入しました。それに続く、今回の「ESET Dynamic Threat Defense」および「ESET Enterprise Inspector」の投入はどんな意味を持ちますか。

Jankech ESETは、エンタープライズセキュリティー分野において検知、予測、防御、対応、統合管理という広範な製品を用意することになります。その中で今回は、防御を行う「ESET Dynamic Threat Defense」と、検知を行うEDRの「ESET Enterprise Inspector」の提供を日本で開始することになります。EDRは、ESETにとってはチャレンジャーともいえる立場の製品であり、単に製品を提供するだけでなく、EDRを活用するためのオペレーターのスキルセットを高めることを支援するなど、サービスを重視した体制づくりにも力を注ぐことになります。

ESET プリンシパルプロダクトマネージャーのMichal Jankech氏
ESET プリンシパルプロダクトマネージャーのMichal Jankech氏

 またESETは、もともとプリベンション(予防)の会社としてスタートし、プリペンションで成長してきた会社です。次の取り組みに関しても、プリベンションを突き詰めていくことになります。これを実現する上で、重要なのがインテグレーションです。これは、オートメーションやオーケストレーションまで含めたものであり、これによって他社との差別化が図れると考えています。また、今後はEDR製品に関する連携なども模索していくことになります。

 私たちは、エンタープライズ分野において、成長性が見込める市場に対して集中的に投資をしていくことを決めています。日本の市場はその一つになります。ローカライズを含めて、日本のユーザーに快適に利用していただける環境を作ります。顧客がESETの製品をより有効に使ってもらうためのサービスを提供していくことに力を注いでいきす。

--エンタープライズ向け製品の関しては、どんな点を重視して開発をしていますか。

Jankech これまでと同様、ESETが持つ最先端技術によってイノベーショナルな製品を開発していく姿勢は変わりません。また、顧客の声を聞き、満足度を高めることをより重視していきます。私は、プリンシパルプロダクトマネージャーとして、年間の約2割はさまざまな国を訪れ、顧客やパートナーの声を聞いていますし、その中で日本もたびたび訪れ、日本のユーザーの声を聞くといった活動も行っています。

 エンタープライズ製品については、プロダクトロードマップを顧客とともに作るという姿勢を持っており、これらの情報も積極的に共有していきます。ESETは研究開発投資を拡大しており、過去3年間で66%増加しています。顧客がどんなものをほしいと思っているのかということを知り、それによって顧客満足度を高めることができる製品を開発したいと考えています。

 今回の「ESET Dynamic Threat Defense」と「ESET Enterprise Inspector」では、日本のユーザーから得られた要望を反映したという部分はありませんが、私たちの製品に搭載される新機能の60~70%は、ユーザーの声をもとに追加した機能であり、残りの30%が、開発部門が主導して搭載した機能です。日本の顧客からは市場特有の要望があったり、独自のセキュリティーポリシーを持っていたりという場合が多いため、今回の製品に限らず、キヤノンMJとの協力関係のもと、それらの要望を製品に反映させるようにしています。

--「ESET Dynamic Threat Defense」と「ESET Enterprise Inspector」は、海外では日本市場への投入に先行する形で2018年8月から発売しています。手応えはどうですか。

Jankech ESET Dynamic Threat Defenseは、既に250社以上で導入されています。ESETユーザーにとって導入が容易であること、多くのユーザーが待っていた機能が追加されたことで、導入が進んでおり、非常にいい手応えを感じています。また、ESET Enterprise Inspectorの反応もポジティブです。まずは、小規模のネットワーク環境でトライアル導入する例が多いですが、可視化することによるメリットを感じているユーザーが多いといえます。同時にESET Dynamic Threat Defenseにも高い関心を寄せており、セット導入を検討している傾向があります。そして、ESET製品を導入していたユーザーに加えて、特にESET Enterprise Inspectorでは、これまでESETを導入していない新たなユーザーからも注目を集めている点が特徴です。

 カナダのある企業は、他のエンドポイントセキュリティー製品とEDRをESETに切り替えました。ESET製品に統合することで、セキュリティー監視機能を強化するとともに、コスト削減効果が生まれ、トータルコストのメリットを享受しています。また欧州の企業では、競合他社に比べて、競争力がある提案ができたこと、同社が進めるグローバルポリシーに準拠できたこと、そして、ここではESETがスロバキアの企業であり、欧州の企業にとっては身近な存在であるということも影響しました。さらに、金融分野の企業では、Amazon Web Services(AWS)を活用したサービスを提供しており、統合管理システムであるESET Security Management CenterとEnterprise Inspectorを組み合わせて、クラウド上で利用しています。製品に拡張性があることに加えて、ESETおよびオランダのパートナー企業による知見やノウハウの提供が生かされたことも大きな決め手となりました。

--日本の市場においては、どんなアプローチをしていきますか。

Jankech トータルコストのメリットや、クローバルポリシーへの準拠、ESETおよびパートナーによる提案力といった強みは、日本でも生かされます。日本には、キヤノンMJという素晴らしいパートナーがいますし、先行した海外での実績や、エンタープライズにおけるESETが持つ知見などを提供していくことになります。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    初心者にも優しく解説!ゼロトラストネットワークアクセスのメリットと効果的な導入法

  2. ビジネスアプリケーション

    Google が推奨する生成 AI のスタートアップガイド、 AI を活用して市場投入への時間を短縮

  3. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

  4. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

  5. セキュリティ

    「iPhone」の業務活用を促進!セキュリティ対策で必ず押さえておきたいポイントとは?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]