「既存ビジネスでは20年後に生き残れない」--住友生命のデジタル変革

日川佳三

2019-05-14 06:00

 ガートナー ジャパンの「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス 2019」が4月23~25日に開催された。ゲスト基調講演に登壇した住友生命保険 執行役員兼情報システム部長の汐満達氏は、新機軸の健康増進型保険「Vitality」を開発した背景と、新規事業創出のための「デジタルイノベーション」への取り組みについて語った。

 汐満氏は、「既存のビジネスは、このまま何もしなければ崩壊する」と指摘する。こうした危機をもたらす原因の1つが、日本の人口減少だ。2050年の人口は、現在よりも20%減って1億人になる。労働人口も、20%減って6000万人になる。

 平均寿命と健康寿命の乖(かい)離も進む。現在、平均寿命と健康寿命の差は、女性では約12年、男性では約9年。平均で10年間は介護の状態だ。今後、平均寿命は伸びていき、2007年に生まれた人の半数は107歳まで生きる。「平均寿命が100歳の時、平均して20年間は何かしらの介護が必要になる」(汐満氏)

 こうした中で、既存のビジネスをどう変えれば企業は生き残れるのか。住友生命保険では、時代の変化に合わせた新たなビジネスの一つとして、健康増進型保険の「Vitality」を作った。講演の前半では、この新しい保険について説明した。

「リスクに備える」「リスクを減らす」へ

 これまでの生命保険会社は、万一の事態が起こった時に、社会保障制度では不足する部分を補うことを使命としてきた。これに対して、これからの生命保険会社は、「個々人が健康になるための活動を支援することで、病気やケガのリスクを減らす手伝いをする」(汐満氏)

住友生命保険 執行役員兼情報システム部長の汐満達氏
住友生命保険 執行役員兼情報システム部長の汐満達氏

 「健康でいるためには、規則正しい食事をして、早寝早起きをして、適度な運動をすればよい。非常に簡単だ」と汐満氏は言う。しかし、頭で理解していても実践できないのが人間の弱さだ。「外食したり、飲みに行ったり、休日はゴロゴロしたりする」(汐満氏)のが人間だ。だから、生命保険会社が、個々人の健康のための活動を後押しする。

 これまでの保険は、加入時の健康状態を基に保険料が決まり、保険料は一生変わらない。その一方、新しい健康増進型保険のVitalityでは、健康への日々の取り組みによって保険料が毎年変わる。リスクに備えるのではなく、リスク自体を減らすことを狙っている。

 Vitalityの仕組みはこうだ。加入時に、契約者が健康への取り組みを宣言することで、保険料を15%割引する。その後の健康への取り組みに応じて、ゴールドやシルバーといったステータスが決まる。このステータスに応じて保険料の割引率が変わる。健康に長く取り組んでいる人ほど保険料が安くなる。

 1年ごとの更新時に、ステータスと保険料が変わる。ステータスは4種類ある。ゴールドの人は、更新時に2%の割引を上乗せする。シルバーは1%上乗せする。ブロンズは保険料に変動がない。ブルーは反対に2%割増になる。保険証の割引率の下限は30%まで、上限は10%まで。

 毎年健康診断を受けて報告する必要がある。会員ポータルに健康診断の結果をアップロードする。さらに、ウェアラブルデバイスやスマートフォンで計測した日々の活動量(歩数や心拍数など)を会員ポータルにデータ連携する。こうしてステータスのためのポイントを獲得する。

 特典もある。健康診断の割引、ウェアラブルデバイスの購入割引、フィットネスジムの月会費割引、スポーツ用品の購入割引、ヘルシーフードの購入割引、などが得られる。スターバックスのコーヒーなどのように、日々の運動に応じた特典も用意した。

 ただし、Vitalityを利用するには、月額864円(8%消費税込み)が必要になる。

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