NECがデジタル事業の強化に向けて新たな体制を始動させた。果たして奏功するか。
デジタル事業の強化に向けた3つの新施策を始動
「2018年度は2020中期経営計画に向けた初年度として“ギアチェンジ”することに注力した。この4月から始まった2019年度は収益基盤の強化に向けた“ターンアラウンド”の年にして中期経営計画の最終年度につなげたい」
NECの新野隆社長は、同社が先ごろ開いた2018年度(2019年3月期)の決算会見で、2020年度(2021年3月期)を最終年度とする中期経営計画に向けた取り組み状況についてこう説明した。この中期経営計画における成長戦略として、同社にとって重要なテーマの1つになっているのが、デジタル事業の強化である。
そのため、この4月1日付けで「CDO(チーフデジタルオフィサー)の設置」「クロスインダストリーユニットの設置」「デジタルビジネスプラットフォームユニットの設置」と、3つの新たな施策を始動。これらは2月末の役員異動とともに発表されていたが、新野氏は決算会見でこれらの施策に込めた思いについて初めて語った。
決算会見に臨むNECの新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEO
まずは発表時の新施策の概要を記しておくと、CDOについては、「ビジネスのデジタル化を加速するため、デジタルトランスフォーメーションを核とした中長期経営戦略の責任を担う」としている。これにより、CSO(チーフストラテジーオフィサー)は廃止となった。
次に、クロスインダストリーユニットについては、「日本政府が推進する『Society 5.0』の実現に向けた官民連携や異業種連携による新事業開発を柔軟かつ迅速に進めるために新設する」とし、事業検証から事業開発、初期の事業展開までのフェーズを担当。当初はスマートシティー、モビリティー、ファストトラベル、パブリックセーフティーネットワークの各分野での事業開発に注力するとしている。
そして、デジタルビジネスプラットフォームユニットについては、「従来のSI・サービス&エンジニアリング統括ユニットを再編して新設する」とし、社内の人工知能(AI)、セキュリティー、生体認証などのリソースを結集。戦略策定およびアセット・製品供給の機能を一元化して競争力の強化を図る構えだ。