5月8~10日の3日間にかけて「2019 Japan IT Week 春 後期」が東京ビッグサイトで開催された。同展示会は「春」「秋」「関西」の年に3回行われており、2018年の来場者数は10万2441人、出展者数は1666社にのぼる。「ソフトウェア&アプリ開発 展」「情報セキュリティEXPO」といった11もの専門展で構成され、最新のIT製品・サービスがひしめき合う中、「Web&デジタルマーケティングEXPO」「通販ソリューション展」で印象的だったITサービスを3つ紹介する。
エンタメ領域にとどまらないARコンテンツ
スターティアラボのブース
「COCOAR(ココアル)」は、スターティアラボが提供する拡張現実(AR)コンテンツの制作サービス。顧客企業はマーカー画像(情報を表示する標識画像)と、ARオブジェクト(ARO)を専用サーバーに登録することでARコンテンツを制作できる。定められた容量内(3GB)であれば、制限なく制作可能。AROのデザインは顧客企業が自分たちで用意し多くの場合、外注しているという。サービス料金は要問い合わせだが初期費用が10万円、月額料金が平均5万円前後だ。
ユーザーは、アプリ「COCOAR2(ココアルツー)」を起動し、マーカー画像をカメラ機能で読み込むことで、AROが画面上に表示される。AROには、テキスト、音声・音楽、画像、動画、GIFアニメ、3D、リンクなどがあり、特に人気なのはフレーム形式の画像や動画。フレームと一緒に写真や動画を撮影できるためだとみられる。
制服の一覧から気になったものにアプリをかざすと制服のフレームが現れる。ユーザーは試着体験が可能
「COCOARは、ユーザー体験の向上に加え、効果測定や的確な広告配信を可能にする」とスターティアラボの担当者は語る。指定された期間内のアクセス情報を解析するため、これまで測定が難しかった紙媒体やイベントの効果を測定することができる。またオプション機能だが、ARをかざしたユーザーにはGoogle、Twitter、LINEなどで、類似ユーザーにはアプリ内で広告が配信される。
競合の売り上げが分かる!? 中国発のECデータ分析サービス
Nintのブース
Nint(ニント)は、電子商取引(EC)サイトにおける競合の売り上げや市場のトレンドを分析する企業。同社はアドウェイズの上海現地法人として設立後、2018年4月に独立した。
「Nint For Ecommerce」は「Amazon」「楽天ショッピング」「Yahoo!ショッピング」の3社に出店している販売会社に向け、競合企業の商品構成や売り上げを調査することで、競合の動向把握や市場トレンドの予測を支援する。一方「Nint For Research」はメーカー向けのサービスで、同3モールを分析することにより、競合メーカーの売り上げや人気商品の把握を手助けする。利用料金は両サービスともに月額6万円から。顧客企業は前月や前年と比較できるよう、過去14カ月のデータを閲覧することが可能だ。
では、どのように売り上げを調査しているのだろうか。同社は、企業の実売データが公開されている中国において、2009年から大手ECモールのデータを収集してきた。そのデータをもとに、日本のECモールの特徴を加味した統計ロジックを開発。そして、商品のランキングや在庫数、レビューなどを収集・分析することで、売り上げを推計しているという。日本での推計精度は8割程度。導入した企業の継続率は7、8割だとしている。
実売データが公開されている分、中国企業の情報の方が正確であることから、同社は中国越境ECに参入する企業に向けたサービス「Nint For China」も提供している。中国の主要ECモールを調査し、商品カテゴリー別の市場規模やトレンドの把握を支援するという。
自社ECへの呼び水となるオウンドメディア
ecbeingのブース
ecbeing(イーシービーイング)はECサイトの構築などを行う企業。記事や動画コンテンツといったオウンドメディアの制作も支援しており、ECサイトと連動させることで、ECサイトの訪問数増加を目指している。「自由度に関しては広告の方が圧倒的に高いが、継続的に出稿するにはお金を出し続ける必要がある。一方、オウンドメディアは資産として日々ストックされていく。いわば掛け捨て保険と積立保険のようなもの」とecbeingは説明する。
同社が手掛けている記事コンテンツについて担当者は「現在、クラウドソーシングや記事代行サービスなど、いろんなソリューションがあるが、われわれはサイトの設計から校正、校閲、SEO(検索エンジン最適化)のチューニングまでをまとめて行うことができる」と述べていた。
動画コンテンツに関しては、ビデオ制作ツール「video maker」を提供している。専門知識がなくてもテンプレートを選択し、写真やテキストを編集するだけで、オリジナル動画を制作できるという。
「アパレル企業をはじめとする多くの企業がECモールではなく、自社ECサイトの売り上げを伸ばしたいという課題を抱えている。今後は、独自性のあるコンテンツを発信することでロイヤルユーザーを増やし、彼らに自社ECサイトを訪れてもらうことが必要である」と同社はコメントしていた。