ほとんどのITベンダーと同様、Microsoftはバズワードが大好きだ。同社の現在のお気に入りの1つに「ピープルセントリック」という言葉がある。この頃用いられている同社の他のうたい文句とは異なり、「ピープルセントリック」を具現化した、低水準フレームワークからオフィス家具(冗談ではない)に至るまでのさまざまな製品が実際に存在している。
提供:Studio O+A
「Microsoft 365」のアプリマーケティング担当シニアディレクターであるRob Howard氏は、米国時間5月6~8日に開催された同社の年次開発者会議「Build 2019」における筆者とのインタビューで、「われわれは、デバイスやアプリに焦点を当てているわけではない。人に焦点を当てているのだ」と述べるとともに、「われわれは自身のためにこういったことを実現しようとしているとともに、開発者やパートナー、顧客にも同じ(エクスペリエンス)をもたらしたいと考えている」と述べた。
MicrosoftはBuildにおいてもはや、プラットフォームとしての「Windows」や「Office」について語らなくなっており、今ではWindowsデバイス上だけではなく、「iOS」や「Android」上でも動作する「Microsoft 365プラットフォーム」について語るようになっている。筆者はこうした変化が、Windowsを前面に押し出さないようにするための変更にすぎないと、今回のBuildに参加する前まで考えていた。しかし実際にはそれ以上のことが起こっているようだ。
Howard氏によると、同社のアイデンティティ管理(つまり「Azure Active Directory」/「Active Directory」)は、Microsoft 365開発者向けプラットフォームの大黒柱だという。そして、統合された「Microsoft Graph API」も重要なピースだという。同社の新たな会話エンジンを実現するこの知識基盤も大黒柱に位置付けられる。さらに、現在開発が進められている「Fluid Framework」という新たなピースもある。
同社のFluid Frameworkは、より迅速な共同編集環境と、複合ドキュメント型環境を組み合わせたものだ。同社は、2019年中にSDKを提供するとともに、自社で作り上げた最初のFluidエクスペリエンスをもたらすと約束している。これを聞いて、同社があらゆる人々に向けてあらゆるものを提供しようとしていると感じたのであれば、それは同社が今回のBuildにおいて、Fluid Frameworkがもたらす開発者エクスペリエンスとユーザーエクスペリエンスの双方をアピールしようとしていたためだ。