はじめに
今や「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)」は、私たち生活者にとっても企業・団体にとっても、なくてはならないものとなりました。生活者は友人や家族、好きな企業とつながって情報を取得したり、自ら情報を発信したりすることを楽しんでいます。
企業は、新規ファンを増やしたり既存ファンとのコミュニケーションを深めたりできる場として、ますます「SNSマーケティング」に力を注いでいるのが現状です。
そんなメリットも多いSNSですが、当連載ではあえて「闇」の部分、つまり「SNSに潜むリスク/トラブル」に焦点を当て、具体例や予防策、巻き込まれた際の対応策などについてご紹介していきます。
企業のSNS運用担当者やリスク管理担当者はもちろん、あらゆる業種・職種の皆さんにお読みいただき、SNSリスク対策にお役立ていただけたら幸いです。
7割以上の利用者はSNSにメリットを感じている
まず大前提として「SNSの利用にはメリットが多く、日本人に人気がある」ことは押さえておきましょう。総務省の「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018年発表)によれば、「ソーシャルメディアを利用して良かったと思えたことがある」と答えた利用者は73.1%に上り、具体例として「社会や経済などに関する最新のニュースや情報を得ることができた」「趣味や身近な地域の話題など、自分が興味のある情報を得ることができた」をメリットとして挙げた人が多くいました。SNSに対して、日本人は特に「情報収集」ツールとしてのメリットを感じているようです。
SNSトラブルの例
その一方で、SNSで情報発信を行う利用者のうち「何らかのトラブルにあった」と回答した日本人が23.2%いました。まずはこの調査結果から見える「SNSトラブル」の例を見ていきましょう。
コミュニケーションのすれ違い
上述した調査では「自分の発言が意図と異なる意味に誤解された」「ネット上で他人と言い合い(けんか)に」「軽い冗談のつもりの書き込みが、他人を傷つけた」が回答の上位を占めました。いずれもコミュニケーションのすれ違いにより生じたトラブルといえます。
SNSでの発言が異なった意味やニュアンスで取られて(誤解されて)、自分が傷ついたり、誰かを傷つけたり、誰かとけんかになったり――。これは比較的よく目にする状況ではないでしょうか。
「赤の他人同士、表情が見えない者同士、(匿名利用の場合は)名前や背景も知らない者同士が文字だけでコミュニケーションするのは大変難しい」ということを各個人、そして企業団体のSNS運用担当者は肝に銘じるべきでしょう。
個人情報流出
「自分の意思とは関係なく、自分について他人に公開されてしまった(暴露)」「自分は匿名のつもりで投稿したが、他人から自分の名前などを公開されてしまった(特定)」――。SNSにおいて、他人の個人情報、肖像権、プライバシーなどにかかわる内容を発信する際は、当人の同意が必要です。
しかし、自分がいくら情報管理に気をつけていても、(悪意の有無に関わらず)第三者によって自分の個人情報や顔写真を流出されてしまうことがあります。第三者のSNSリテラシー不足が原因のケースもありますので、せめて自社の社員を加害者にはしないように、企業は社員向けにSNSリスク研修を行うべきでしょう。
アカウント乗っ取り
「自分のアカウントが乗っ取られた結果、入金や商品の購入を促す不審なメッセージを他人に送ってしまった」――。SNSのID(アカウント名)、パスワードは大切な個人情報です。IDとパスワードの両方が盗まれたりIDが盗まれてパスワードが解析されたりすることで、アカウントが乗っ取られると、さまざまなトラブルが起こることが考えられます。
情報を盗まれたり、乗っ取られたアカウントからスパムを送信されたり、詐欺などに悪用されることもあります。被害者だけでなく加害者になってしまう危険もあることを知っておきましょう。予防策としては「見知らぬユーザーからの友達リクエストをむやみに承認しない」「ログインには二段階認証を使う」「占い/診断アプリをむやみに使わない」などがあります。社員の個人アカウントも自社の公式アカウントも、乗っ取られないよう注意が必要です。