次世代の“Broad AI”の実現を目指す--IBM Researchが示す研究開発の現状

渡邉利和 2019年05月17日 11時14分

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 日本IBMは5月16日、本社内にて「MIT-IBM Watson AI Lab Summit 2019」を開催。併せて、報道機関向けにマサチューセッツ工科大学(MIT)とIBM Researchが共同で設立した「MIT-IBM Watson AI Lab」での研究開発の現状についての説明を行った。

 MIT-IBM Watson AI Labの設立は、2017年9月12日付けで発表されたもの。10年間で2億4000万ドルという、産学協同プロジェクトとしては異例ともいえる巨額の投資が行われることで注目された取り組みだ。開会のあいさつを行った日本IBM 執行役員 研究開発担当の森本典繁氏は、IBMにおける人工知能(AI)研究の歴史が70年以上に及ぶことと、MITのAIラボが1950年代に開設されたことを紹介し、両者がAI研究史の初期からAI研究開発をリードする存在であったことを強調した。

日本IBM 執行役員 研究開発担当の森本典繁氏
日本IBM 執行役員 研究開発担当の森本典繁氏

 また、MIT-IBM Watson AI Labについては、「これまでIBMが実施してきた中でも最大級の産学連携プログラム」であり、AIアルゴリズムや産業分野への活用に特化した研究開発が行われているとした。その上で、本プログラムの特徴として同氏は、「IBMが単に資金をMITに提供して終わりということではなく、IBMが産業界のリーダーとして、産業的な知識や技術面でのIP(知財)や技術、現在あるものに加え、今後実現される技術なども投入して、学術研究組織として最大の頭脳であるMITと一緒に活動する、というのが中核的なコンセプトだ」と説明した。

 また、本プログラムの目的として、「既に活用されている“普及しているAI”ではなく、今後実現される“高度なAI”の研究開発に取り組む」としている。

 IBMの研究開発組織であるIBM Researchのディレクターを務めるDario Gil氏はまず、IBMとAIの深く長い関わりに関する歴史的エピソードとして、AI研究の出発地点であり、「AI(Artificial Intelligence)」という用語自体が誕生した場と言われている「ダートマス会議(Dartmouth Workshop on AI, Summer 1956)」の開催提案者の一人が同社から出ている(Nathan Rochester氏、IBM701の設計者で、初のアセンブリ言語開発者としても知られる)ことを紹介した。

IBM Research ディレクターのDario Gil氏
IBM Research ディレクターのDario Gil氏

 また同氏は、今回の産学協同プロジェクトの特徴として、「従来の産学協同プロジェクトは、実質的には産業界による学者の“引き抜き”だったが、こうしたやり方には継続性がない」と語っており、有為の人材をIBMに引き入れることが目的ではなく、あくまでもMITと“共同で”研究に取り組むという点が重要だとしている。

 AIの進捗について同氏は、現在普及しているAIを“Narrow AI(狭いAI)”、将来的な実現目標となっているAIを“General AI(汎用的なAI)”とした上で、次の実現目標となっているAIを“Broad AI(広いAI)”とした。同氏によれば、現在のNarrow AIはディープラーニング(Deep Learning:深層学習)を中心としたもので、「シングルタスク/単一ドメインを対象に、人間を越える正確性を実現する」技術であり、実現に当たっては大量のラベル付けされたデータを必要とするものだ。

AIの進化を示すNarrow AI、Broad AI、General AI
AIの進化を示すNarrow AI、Broad AI、General AI

 これに対してBroad AIは機械学習に加えて推論も可能とするシステムで、「マルチタスク、マルチドメイン、マルチモデル」で、かつより少ないデータからの学習が可能となる。ちなみに、General AIの実現時期について同氏は「2050年以降」としており、現実的には「まだまだSF(サイエンスフィクション)の世界」という段階だという。

キャプション
Narrow AI、Broad AI、General AIの特徴

 その後、同プログラムの2人のディレクターで、IBM側のDavid Cox氏とMIT側のAntonio Torralba教授も登壇し、それぞれ現在の研究テーマや進捗状況についての説明を行った。

 本プログラムは10年という長期間が設定されている。General AIの実現が2050年以降という点から見ても、AIに関する研究開発はまだまだこの先長い道のりがあることは間違いないだろう。一時的なブームとも言うべき状況に流されるのではなく、長期的な視点に立った取り組みを、この分野のリーダー的な立ち位置にあるIBMとMITが共同で行うことの意義は大きなものがあると言えるだろう。

(左から)MIT-IBM Watson AI LabでIBM側のディレクターを務めるDavid Cox氏、IBM Research ディレクターのDario Gil氏、MIT-IBM Watson AI LabでMIT側のディレクターを務めるAntonio Torralba教授、日本IBM 執行役員 研究開発担当の森本典繁氏
(左から)MIT-IBM Watson AI LabでIBM側のディレクターを務めるDavid Cox氏、IBM Research ディレクターのDario Gil氏、MIT-IBM Watson AI LabでMIT側のディレクターを務めるAntonio Torralba教授、日本IBM 執行役員 研究開発担当の森本典繁氏

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