非民主国家に由来する技術に関する調査は今後増加
デジタル世界の急速な拡大に対して、より大きな監視体制や説明責任が求められている。そうした中、グローバル化や地政学的な動向によって、比較的新たな視点が生まれている。
私たちは通常、市場の効率化を急ぐあまり、価格が適正である限り、石油や天然ガスがどこから来るのか、食物はどこで育てられたのか、スマートフォンはどこで作られているのかを知らないし、関心を持たない。
こうした状況のメリットは計り知れない。ハンドヘルド型スーパーコンピューターとも言うべき最新のスマートフォンは、2007年に初めて表舞台に立ち、現在では誰もが利用できる。
こうした傾向の副作用の1つが表面に見えることがある。エレクトロニクス分野を中心に「Made in China」のアイテムは数え切れないほど多く、これらを見ないで1日を過ごすことは不可能だ。
中国の低コストな大量生産と、安価な石油による低コストのグローバルな輸送は、世界中の企業に恩恵をもたらしている。この結果、官民の分離について透明性を持たない、中国の独裁体制がデジタル世界の重要な要素に影響を及ぼし得るポジションにある。
世界的な緊張が高まる中、西側諸国の中国企業への監視が高まっている。現在大きな話題となっているのは、中国最大のスマートフォンメーカーである多国籍巨大企業、Huaweiの存在である。
Huaweiは現在、中国政府の支援を背景とした、スパイ活動や知的財産窃盗、市場での低価格端末のダンピングの疑惑に直面している。スマートフォン以外でも、その潜在的なセキュリティーリスクにより、英国政府は現在、同国内の最先端の5Gネットワークの構築をHuaweiに許可すべきか否かに関して、スキャンダルへの対応を行っている。また、Huawei製ルーターのセキュリティーホールを「Smokin Gun(煙の出ている拳銃)」(=動かぬ証拠)と表現した最近の記事もあった。
Facebookなどの米国の巨大テクノロジー企業は、広告ビジネスモデルの一環として、私たちのオンライン活動を監視している。しかし、こうした活動は政府とは明確に切り離されており、規制との対立を頻繁に引き起こしている。
筆者が常々言っている通り、重要なのは、情報を収集された人々に何が起こるかだ。Googleの情報収集は、こうした情報を脅迫、統制、抑圧に用いる世界各国の「KGB」の情報収集とは異なるものだ。
西側諸国の平均的な一般消費者はおそらく、中国製スマートフォンがどのような情報を収集しているのかについて関心はない。中国は、恐ろしい「個人信用スコア」や顔認証などの技術を用いて、全体主義国家の効率化を図っているが、そのような形で人々の情報が抑圧のために使用されるとは考えられない。
しかし、各国の政府はセキュリティーについて無関心でいる訳にはいかず、非民主的な国家で生まれた技術についての調査は拡大している。仮にこうした企業が、疑惑を払拭したいと思うのなら、自社製品の透明性を過去最高レベルにまで引き上げるとともに、信頼できる第三者の企業や機関による自社の活動の監視を通じて、説明責任を保証できるよう尽力すべきである。
そうでなければ、潜在的な影響を無視することはできない。台湾製ルーターの脆弱性を悪用する攻撃、エクスプロイトは中国製ルーターのそれと同じではない。
米国の選挙で使用される投票マシンのメーカーが、ドイツやブラジルの多国籍企業に買収された場合と、ロシアのオリガーク(新興財閥)とのつながりがある企業に買収された場合を、同列に扱う訳にはいかない。国際金融のネットワークが複雑であることや、資金の移動や所有者の偽装が容易であることから、危険性はさらに高まるのである。