Salesforceは、同社のローコード開発アプローチとブロックチェーンネットワークを組み合わせることで、顧客関係管理(CRM)データをパートナー企業のネットワークにもたらそうとしている。
Salesforceは米国時間5月29日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催中の開発者向け年次カンファレンス「TrailheaDX 2019」で「Salesforce Blockchain」を発表した。Salesforce Blockchainは、オープンソースのブロックチェーン技術「Hyperledger Sawtooth」に基づいており、顧客がブロックチェーンのワークフローや契約、アプリケーションをコーディングしなくても管理できるようにすることを目的としている。
Salesforceの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)Parker Harris氏は29日の基調講演で、「Salesforceの使いやすさと、ブロックチェーンのパワーを手にできるようになる」と述べ、「これはパートナーネットワークを構築するための迅速かつ容易な手段だ」と説明した。
Salesforceによると、アリゾナ州立大学やIQVIA、S&P Global RatingsがSalesforce Blockchainを使用しているという。
またSalesforceは、開発者教育プラットフォームの「Trailhead」に、責任ある人工知能(AI)を構築するスキルを向上させるための倫理モジュール「Responsible Creation of Artificial Intelligence」を加えたことを28日に発表するとともに、JavaScriptフレームワーク「Lightning Web Components」のオープンソース化を29日に発表している。
Salesforceの最高製品責任者(CPO)Bret Taylor氏は、ブロックチェーンの利用によって、パートナー企業との連携とともに、契約やデータ共有の取り扱いを透明性あるかたちで実現できるようになると述べた。
ブロックチェーンを推進しているのはSalesforceだけではない。IBMはジョイントベンチャーを立ち上げてサプライチェーン間を連携させるとともに、食の安全をつかさどるネットワークを構築している。また、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftも取り組みを拡大している。さらに一部の国の中央銀行などがクロスボーダー決済での利用を検討しているほか、投票への利用に向けてブロックチェーンの活用を検討している国もある。
Salesforceの考えは、Taylor氏の表現を借りると、「分散形式で検証可能、かつセキュアな方法」によって顧客データを扱う目的で、ブロックチェーンを利用する機が熟したというものだ。さらに企業はより大規模なエコシステムや、より多くのサードパーティーとやり取りするようになっているため、信頼性を確保しつつ効率を向上させる技術を必要としている。Salesforceは、CRMとブロックチェーンを組み合わせることでセールスやサービス、マーケティングをまたがる新たなプロセスやワークフローを生み出せると考えている。
同氏は「これはまだ初期の技術であり、多くの実験的要素を含むものとなる」と述べた。
エンタープライズアプリケーションの統合を手がけるMuleSoftの買収と、「Salesforce Customer 360」戦略を考え合わせると、ブロックチェーンに対する同社の取り組みは筋が通っていると言える。
Salesforce Blockchainは、ローコードでネットワークを構築するとともに、ブロックチェーンオブジェクトを他のCRMオブジェクトと同様に扱えるようにすることを目的としている。ブロックチェーンのデータを、Salesforceのプラットフォームとネイティブに統合することで、すぐに利用できるようにしている。さらに、企業は「Einstein」によるAIのアルゴリズムを実行し、ブロックチェーンデータをセールスの見通しや予測に取り入れることができるようになっている。また、ビルド済みのアプリやほかのブロックチェーンネットワークとの統合ツールを提供する。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。