デロイト トーマツ グループ(デロイト)は5月28日、デロイト グローバルが行った「2019年 デロイト ミレニアル年次調査」をもとに日本のミレニアル世代の意識に関する調査結果を発表した。
この調査は、2018年12月~2019月1月に世界42カ国、1万3416人の1983~1994年生まれのミレニアル世代、加えて10カ国3009人の1995~2002年生まれのZ世代に対して行われた。日本の調査結果はミレニアル世代319人、Z世代301人(各世代の男女比は約1対1)の回答をもとに分析されている。同調査は今回で8回目であり、今回からミレニアル世代の傾向をより正確に知るため、大学卒などの学位取得者以外(高校卒など)も調査対象に含めた。
デロイトの澤田氏
デロイトは、日本と世界のミレニアル世代の相違点について説明。デジタル化の進展に対しては世界と日本ともに約7割が前向きな見方をしているという。だが、製造業における自動化やデータ化を目指す概念「Industry 4.0」により、就職が難しくなると回答した割合は日本が30%で世界より15%低かった。また「Industry 4.0に際して必要なスキルや知識があるか」という問いに対して「全てある」と答えた割合をみると、日本は7%に過ぎなかった。加えて、Industry 4.0への準備における責任主体に関して「企業」と回答した割合は37%と日本の方が7%高く、「入社してから考えればいい」という受け身の姿勢が見受けられたとしている。
フリーランスや副業という形でインターネット上で単発の仕事を受注する働き方「ギグ・エコノミー」においては、日本と世界との間に大きな違いがみられた。世界のミレニアル世代のうち56%がフルタイムの仕事の代わりに、また68%が「副業としてギグ・エコノミーに参加している」または「参加を検討している」と回答したが、日本ではどちらの選択肢も25%にとどまっていた。このことから、日本のミレニアル世代の参加意欲は世界と比べて低いことが分かる。理由は、報酬やワークライフバランスに加え、仕事形態や将来計画の懸念があるという。結果として日本のミレニアル世代は「2年以内に離職を希望する」と答えた割合が49%と高いものの、現時点ではあくまでも他企業に転職する傾向があると考えられる。
この調査結果に対して、デロイトでシニアマネジャーを務める澤田修一氏は「日本のギグ・エコノミーのプレゼンスは世界と比べると高くないものの、潮流を踏まえると今後発展が見込まれる。そのため、日本企業もスキルを持ったフリーランスの人材をどう活用するのかを考える必要がある」と述べた。
同社のヤマモト氏
では、なぜ企業はミレニアル世代に注目する必要があるのだろうか。この問いに対して、デロイト執行役員のキャメル・ヤマモト氏は「労働力に加え、企業が今後、新しいことをやろうとした時、その成功はミレニアル世代にかかっている。これまで個人よりも職場の方がテクノロジー環境が良く、新入社員は『入社して初めてできること』があった。だが現在は、個人のテクノロジー環境やITスキルが発達し、『入社して不便になった』と感じる人さえいる。そのため、企業はミレニアル世代、特に『イノベーター』や『アーリーアダプター』と呼ばれる層を生かさなければならない」と説明した。
ヤマモト氏は今後、企業に一番求められるのは「Adaptation(適応)」だと語る。これまで若手を採用したら、多くの時間をかけて先輩社員が彼らを指導することで戦力化してきた。だが、これからは企業が若手に適応し、若手のITスキルをはじめとする能力、もしくはこれから吸収していく力を生かす必要があるという。「今後、企業にとって大切なのは、ミレニアル世代に政策を提案させ、事業をリードさせること。経験不足ゆえに失敗することもあるだろうが、その際はベテラン社員が手助けすべき」と同氏は述べた。
加えて最近、人材業界などでは「Experience」という言葉がキーワードとされている。これまでExperienceといえば、「Customer Experience」だったが、近年は「Employee Experience」に変化しているという。そのため、ミレニアル世代に全力を発揮してもらうためには、企業におけるExperienceを充実させる必要があるとしている。
ヤマモト氏は「もちろん、全てのミレニアル世代が優秀なわけではない。世界のミレニアル世代が自身の成長や社会問題に関心がある一方、日本の同世代は報酬やワークライフバランスで終わってしまう傾向がある。世界と比較するとデジタル感度も低く、頼りなく映るかもしれない。だが、権限を与えて実践を積ませることで、日本のミレニアル世代も確実に進化するだろう」と語った。