「Lumadaと共創で社会変革を加速」--日立製作所のIT領域における戦略

大河原克行 2019年06月05日 06時00分

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 日立製作所は6月4日、報道関係者やアナリスト、機関投資家を対象にした「Hitachi IR Day 2019」を開催し、「Lumada」を中心としたITセクターの事業方針などについて説明した。「2021 中期経営計画」の最終年度となる2021年度に、ITセクターの売上収益で2兆6000億円を目標とするほか、Lumadaの事業売上収益は1兆2000億円、海外売上収益は1兆1000億円、ROICは15%、調整後営業利益率は13%を目指すとした。また、他のセクターでのLumada事業を含む売上収益としては3兆円を目指すという。

日立製作所 代表執行役 執行役副社長 システム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一氏
日立製作所 代表執行役 執行役副社長 システム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一氏

 説明に立ったシステム&サービスビジネス統括責任者 兼 社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一執行役副社長は、「ITセクターは、金融ビジネスユニット、社会ビジネスユニット、ディフェンスビジネスユニットのほか、全社を横断するサービス&プラットフォームビジネスユニットを有し、Lumada事業をコアに、日立グループの成長エンジンとして、全事業分野を牽引し、社会やお客さまの価値向上を図る。デジタルの力で国内外のお客さまの期待に応え、持続可能な社会を実現するグローバルトップクラスのソリューションプロバイターを目指す」と、ITセクターの基本方針を示した

 塩塚氏は、将来的に売上収益4兆円、調整後営業利益率で15%を目指し、グローバルトップクラスのソリューションプロバイダーとして、同社に未踏の領域に到達したいとの考えを表明。「『2021 中期経営計画』は、その入口に到達するための重要な期間。他のセクターのLumada事業を含む売上収益で3兆円、調整後営業利益率で13%を達成しないと、次のステップに行くことができない。そのためには、デジタルセントリックな事業体としてLumadaを活用し、社会イノベーション事業を加速する」と述べた。

「2021 中期経営計画」でのITセクターにおける目標
「2021 中期経営計画」でのITセクターにおける目標

 2018年度までの「2018 中期経営計画」では、収益性の向上に注力し、成長投資に必要なキャッシュを創出したとする。営業利益率を6.7%から10.9%と2桁台に乗せ、営業キャッシュフローは3年間累計で6700億円に達した。一方、売上収益で2000億円規模に上る低収益事業からの撤退と収束を行ったほか、日立ソリューションズの事業統合をはじめとする社会、金融、公共分野のSI事業の再編によるフロント力およびモノづくり強化を実現している。プロジェクト管理の徹底および強化によるロスコストの削減や、3年間で1000億円規模の投資をLumadaに対して行ってきたことなどを示した。

 「日立のITセクターは稼ぐ力を確実につけた。『2021 中期経営計画』では、これまで創出してきた収益を原資として投資するとともに、成長が見込まれるグローバル市場で売上を拡大する。過去3年間投資を控えてきた部分もあったが、今後3年間はLumadaを中心に1兆円規模の投資を行う」(塩塚氏)。その内訳は、M&Aなどの事業拡大投資で8300億円、Lumada関連投資で1500億円を計画している。

「2021 中期経営計画」で掲げる展開
「2021 中期経営計画」で掲げる展開

 また塩塚氏は、「『Lumadaは日立の柱になるのか』といった声がある。それに回答する観点から説明する」とし、「Lumadaはデータを活用し、お客さまやパートナーとの協創によって、新たな価値を創り出すエンジンであり、カスタマイズを最小化し、新規システム開発を無くし、多くのお客さまに価値を素早く届けるビジネスモデルを確立し、売上収益拡大と高収益化の両立を実現するものになる」と説明。「日立は、アクセンチュアやIBMなどの成功モデルに学びながらも、OT(オペレーショナルテクノロジー)とIT、プロダクトを現場知として商材化し、これらの巨人とは違う成長モデルを確立することになる」と位置付けた。

 Lumadaには、これまで650件以上のユースケースがあり、70種類のソリューションコアを用意する。これらを活用するためのクラウド基盤や開発ツールなどを提供することでエコシステムを広げ、社会イノベーション事業を拡大していくという。ユースケースは、売上収益シミュレーション、故障予兆診断、サイバーセキュリティ監視業務の効率化、在庫適正化、農作物育成分析、ファン会員情報分析、熟練技能のデジタル化など多岐に渡っている。またITセクター以外の領域における活用事例には、ライフセクターでは医療装置向け故障予兆診断、エネルギーセクターでは発電設備の故障予兆診断、インダストリーセクターでは機械設備の故障予兆診断などがあるとした。

「Lumada」のユースケースとソリューションコア
「Lumada」のユースケースとソリューションコア

 さらに塩塚氏は、現在2万人規模のLumadaを支える“デジタル人財”を、2021年度までに3万人規模に拡充する考えも示した。「2019年4月に設立した日立アカデミーや、5年前から取り組んでいる社内資格制度の日立ITプロフェッショナル認定制度を通じて、スペシャリストの育成を進めているが、競合する企業に比べると、海外のデジタル人財が圧倒的に見劣りしている。北米、アジアを中心に海外事業体制を強化し、グローバルでのLumada事業の拡大を加速していく。海外におけるフロントとデリバリーを中心とした事業体制の強化では、現在2万3000人の規模を4万人規模にまで拡大する」

日立製作所 取締役代表執行役 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏
日立製作所 取締役代表執行役 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏

 一方、社長兼CEO(最高経営責任者)の東原敏昭氏は、「『2021 中期経営計画』では、社会イノベーション事業でのグローバルリーダーを目指す」と表明し、「Lumadaは社会イノベーション事業を加速するドライバーになる。高度なITでお客さまのイノベーションを加速するために、Lumadaの拡充およびグローバル展開の加速のために、ここに重点的に投資を行っていく。これにより、お客さまがイノベーションを起こしたいと思ったとき、日立を想起してもらうポジションになることを目指したい」と述べた。

 また、「社会価値、環境価値、経済価値の3つの価値を追求し、人々のQoL(Quality of Life)の向上、顧客企業の価値の向上を図ることに取り組む」と語った。

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