「リスク回避になっていた」--再び上場企業となったDellの次なる戦略

末岡洋子

2019-06-06 06:00

 DellによるEMCの買収から約3年が立ち、Dell Technologiesがファミリー企業の統合を進めつつある。中でもVMwareは、クラウド戦略の柱として製品への組み込みが進んでいる。5月に米国ラスベガスで開催された「Dell Technologies World 2019」では、それを強く感じることができた。

VMwareとの関係は緊密に

 2019年のDell Technologies Worldには、122カ国から1万5000人が参加登録し、過去最大となった。基調講演で会長兼CEO(最高経営責任者)のMichael Dell氏は、「Better Together」として製品の統合を発表した。Dellは2016年のEMC買収以来、「デジタル時代に不可欠なインフラ技術を提供する」として、ファミリー企業(Dell、Dell EMC、Pivotal、RSA、Secureworks、Virtustream、VMware)にそれを実現する技術がそろっているとしてきた。このところの方向性は、これらを統合することでより消費しやすいソリューションに昇華させるというものだ。そこでは仮想化技術を持ち、プライベートクラウドで使われているVMwareは重要な技術となる。

Michael Dell氏(左)とPat Gelsinger氏
Michael Dell氏(左)とPat Gelsinger氏

 そのVMwareでCEOを務めるPat Gelsinger氏は、2日連続でDell Technologies Worldの基調講演に登場、2日目の基調講演では15分を費やして、VMwareの戦略を説明した。ファミリー企業の中では、VMwareだけという特別扱いだ。

 だが、DellとVMwareの接近は多少の時間を要した。DellがVMwareを含むEMCを670億ドルで買収するという計画を発表した直後、Dell氏とGelsinger氏は、Dellのイベントで、そしてVMwareのイベントで、買収後のVMwareの独立性を何度も強調した。今回のDell Technologies Worldではトーンは完全に変わり、「独立性」という言葉はステージ上ではなかった。発表された製品の多くにVMwareが関係しており、VMwareの戦略をDell Technologies Worldの基調講演で行ったのも自然と言える。

 このような統合強化について、初日にプレスの会見に応じた最高財務責任者(CFO)のTom Sweet氏は、「Dell Technologiesとは何か、何をするのか、どうやって差別化を図るのかにたくさんの時間を費やしている」と述べた。ファミリー企業のトップは定期的に集まり、それぞれの視点での課題とチャンスを話し合っており、そこから統合ソリューションにつながるという。「どうやってファミリーの技術を合わせてユニークなポジションを提供するか、そこが魔法」とSweet氏。そこでの重要な物差しが、「顧客がビジネスを変革したり差別化したりすることを支援する技術とはどのようなものか?」だという。

Dell Technologies 最高財務責任者のTom Sweet氏
Dell Technologies 最高財務責任者のTom Sweet氏

 イベント中、Dell EMCの社員からも、あからさまの統合アピールに驚いたという声は聞かれた。だが、Dell EMCで戦略とプランニング担当シニアバイスプレジデントを務めるMatt Baker氏は冷静に、「VMwareと協業しているが、HPE(Hewlett Packard Enterprise)もVMwareと協業している。われわれはレベルが違うかもしれないが、VMwareは独立した組織であり、VMwareの深く、広いエコシステムは戦略的に重要だ」と述べ、VMwareの独立性が重要であることを示唆した。

 現在、Dellは約80%のVMwareの株式を所有する。Michael Dell氏のグループ取材では、「VMwareが公開企業である意味はあるのか?」という声も聞かれた。これに対しDell氏は、「VMwareを完全子会社化する計画はない」と言い切った。そして、Baker氏同様に、VMwareの成功の理由が独立したエコシステムの上に成り立っているとし、これを維持することは重要だという見解を示した。「VMwareが技術業界全てにとって独立したリソースであることは大切なことだ」(Dell氏)

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