クラウドERPで中堅中小企業のデジタル変革を推進--MSら団体設立

阿久津良和

2019-06-06 06:00

 日本マイクロソフトとパシフィックビジネスコンサルティング(PBC)、日本ビジネスシステムズ(JBS)は6月5日、年商50~300億円規模の中堅中小企業に対するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するパートナーコンソーシアム「Cloud ERP Partners for SMB(CEPS)」の設立を発表した。

 同コンソーシアムは、「Microsoft Dynamics 365 Business Central」を中核に、中堅中小企業向けERP(基幹系情報システム)導入を得意とするPBCと、マイクロソフトのクラウドソリューションの実績を持つJBSが主幹事となり、日本マイクロソフトが事務局を担当する。既にSIer系ベンダー15社の参画が確定済みで、今後。3年間に1000人のコンサルタント育成と、1000社へのDynamics 365 Business Centralの導入を目標に掲げる。

米Microsoft CVP, Cloud Marketingの沼本健氏
米Microsoft CVP, Cloud Marketingの沼本健氏

 Dynamics 365 Business Centralは、Microsoft Dynamics NAVの後継に当たる。中堅中小企業向けのERPながら、「日本における認知度はまだ高くはない」(米Microsoft CVP, Cloud Marketingの沼本健氏)という。だが、オンプレミス向けの製品時代を含めると32年の歴史を持つ。沼本氏の説明によれば、世界196カ国で22万3000社以上の顧客を持ち、4500社のパートナー企業を通じて、330万人のユーザーが利用している。同社は中堅中小企業ほど統一的なビジネス管理ソリューションを持たなければならないと指摘。「生産管理や財務など個別にシステムを導入していると、横断的なビジネスができない。Microsoft Dynamics 365 Business Centralは財務やセールス、サービス、オペレーションを統合できる製品」(沼本氏)と、中堅中小企業のバックオフィスに適したソリューションであることをアピールした。

 日本マイクロソフトは、潜在顧客の需要を喚起するため、事例やデモンストレーションを中心にしたデジタルコンテンツキャンペーンを展開すると同時に、全国に散らばる中堅中小企業を対象にしたセミナーの開催を通じて、今後3年間でMicrosoft Dynamics 365 Business Centralの顧客導入数として1000社を目指す。また、パートナー人材を育成するため、日本語によるデジタルラーニングコンテンツの展開や、トレーニングパートナーとの協業で実践的なトレーニングやワークショップの開催も予定。今後3年間に1000人名のコンサルタント育成を目指すとした。

日本マイクロソフト Dynamicsビジネス本部長の大谷健氏
日本マイクロソフト Dynamicsビジネス本部長の大谷健氏

 日本市場でこのソリューションを担当する日本マイクロソフト Dynamicsビジネス本部長の大谷健氏は、「大手企業は数年前からDXを事業戦略の中枢に置いているが、この1年で製造業や流通といった中堅企業も『DXを推進したい』と言われるようになった」と中堅中小企業の変化を説明。さらに国内におけるERPソリューションについては、「既に大手企業には順調に広まりつつあり、われわれとしては2025年を1つのマイルストートンとして、某大手ERPと競い合う戦略を進めている。今回の取り組みはDynamics 365の裾野を広げるフェーズ2だ」と語った。

パシフィックビジネスコンサルティング 取締役 業務管理本部長の荻田篤史氏
パシフィックビジネスコンサルティング 取締役 業務管理本部長の荻田篤史氏

 前述の通りCEPSは、PBCとJBSが推進主体となるが、2018年10月に日本でローンチしたMicrosoft Dynamics 365 Business Centralの国内商習慣対応パックを提供してきたPBCには、「問い合わせが殺到している」(PBC 取締役 業務管理本部長の荻田篤史氏)という。同社はMicrosoft Dynamics NAV時代から、日本語化や業種別テンプレートなどを提供し、Microsoft Dynamics 365 Business Centralの事例として、アパレル系企業のメゾン・キツネ・ジャパンが実質3カ月の短期導入をしたと紹介うる。この他にも導入中の企業が10社、導入の内示は10社、商談中は40社と、Microsoft Dynamics 365 Business Centralに対する需要が膨れ上がるのは明白だとする。「多くの問い合わせに単独で対応するのは難しい。その声に応えるため、エリア・業種の拡大やスペシャリストの育成が欠かせない」(荻田氏)と、CEPSの設立理由を説明した。

日本ビジネスシステムズ 執行役員 ビジネスソリューション本部担当の櫻田浩氏
日本ビジネスシステムズ 執行役員 ビジネスソリューション本部担当の櫻田浩氏

 JBSも「従来型ビジネスでは少数の顧客にしか対応できていない。中堅中小企業は数が多いため、大きな勢力でうねりを作らないと広まらない」(執行役員 ビジネスソリューション本部担当の櫻田浩氏)と、CEPS設立に対する思いを語った。従来型のSIerが企業ごとにカスタマイズするのではなく、業務の見直し相談を事前に実施し、パラメーター設定やテスト移行・導入支援により、3カ月間という短期導入を目指す。

 具体的なコスト効果は、旧来のオンプレミスと比較して10年で90%の削減が可能だとJBSは説明する。「従来型は導入に7~8000万円を要し、保守コストもその1~2割かかる。製品は5年程度でサポート終了を迎える。システム入れ替えなどで2億円ほどかかるが、SaaSならそのまま使い続けられる」(櫻田氏)と説明した。さらにJBSは、「大企業顧客が多いため、関連企業や子会社を中心に提供するところから始める」(櫻田氏)という。

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