アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンは6月11日、ブロックチェーン関連サービスに関する記者説明会を開催した。併せて、ソニー・ミュージックエンタテインメントによるAWSを活用した音楽の権利処理の取り組みが紹介された。
ブロックチェーンとは、信頼できる中央機関を必要とせずに、複数の当事者がトランザクションを記録し、その安全性を保障できるアプリケーションを構築可能にする技術。既存の多くのビジネスネットワークは中央集権型のシステムに依存しており、非効率かつ高コストになりがちであり、時間を要する監査作業が必要になっている。
Amazon Web Services ビッグデータ/データレイク/ブロックチェーン担当 ゼネラルマネージャーのRahul Pathak氏
ブロックチェーンでは、主に「分散台帳」「合意アルゴリズム」「スマートコントラクト」という3つの要素を組み合わせることで、当事者同士が互いに取引を行うことができるネットワークを構築する。当事者によるデータの不変性と信頼性を担保し、中央集権の必要性を排除する仕組みとなっている。
ヘルスケア業界の電子カルテ管理、製造業のサプライチェーン管理、デジタルコンテンツ業界の著作権管理といった領域での活用が進んでいる。
AWSでは、ブロックチェーン/台帳管理サービスとして「Amazon Quantum Ledger Database(QLDB)」と「Amazon Managed Blockchain」の2種類を提供している。
Amazon QLDBはフルマネージド型の台帳データベースであり、アプリケーションデータに対する全ての変更を追跡・検証できる点が最大の特徴だ。銀行取引の履歴追跡、保険金請求の来歴検証、サプライチェーンの移動追跡などに対応し、中央集権型の管理ができるブロックチェーンの台帳機能を実現する。保管されたデータを改変、削除できないといった利点を持ち、データに対する意図しない変更が発生していないかどうかをハッシュ関数で検証できる。
Amazon Quantum Ledger Database(QLDB)の仕組み
Amazon Managed Blockchainは、フルマネージド型のブロックチェーンサービス。Hyperledger FabricとEthereumの両フレームワークを使用して、分散型のスケーラブルなブロックチェーンネットワークを作成・管理できる。信頼できる中央機関がなくても、複数の当事者がデータを直接かつ安全に処理・所有できる仕組みになる。
Amazon Managed Blockchainの仕組み
今回事例として発表されたソニー・ミュージックエンタテインメントでは、音楽の権利情報処理システムにAmazon Managed Blockchainを採用した。ソニーグループでは、2018年10月にブロックチェーン基盤を活用したデジタルコンテンツの権利情報処理システムを発表。これに音楽著作権の登録管理機能を追加して、音楽クリエーターの権利情報処理に関する作業効率と信頼性を高めた新システムを開発した。具体的には、共同制作などの複数クリエーター間の同意をブロックチェーン上に記録する機能と、それらの記録を利用して著作権の登録を効率的に処理する機能を有している。
ソニー・ミュージックグループの管理業務統括会社としてグループ全体の情報システムを推進・支援している、ソニー・ミュージックアクシス 執行役員 情報システムグループ 本部長の佐藤亘宏氏は「高いセキュリティーと可用性、柔軟性を兼ね備え、安価に開発できることが採用の決め手になった」としている。
また、グループ全体で2012年ごろからAWSを利用し、現在グループ内で運営する全てのBtoC系サービスはAWSに移行しているなど、同社クラウドサービスとの親和性の高さも要因になったという。
ソニー・ミュージックアクシス 執行役員 情報システムグループ 本部長の佐藤亘宏氏