Gartner Summit

「プロジェクト単位でもデータドリブンな組織を実現できる」--メルカリの松田氏

日川佳三

2019-06-19 06:00

 ガートナー ジャパンの「ガートナー データ&アナリティクス サミット 2019」が6月10~12日に開催された。ゲスト基調講演には、メルカリのアナリストチームに在籍する松田慎太郎氏が登壇。「メルカリにおける分析の組織と文化」と題し、データドリブンな組織を作るためのノウハウを解説した。

 メルカリは、スマートフォンで使えるフリーマーケット(フリマ)アプリを手がける。メルカリのアナリストチームは、メルカリを利用するユーザーのデータなどを分析し、メルカリのアプリを改善するミッションを持つ。個々のプロジェクト単位で、プロダクトマネージャの意思決定を支援している。

 講演では、アナリストチームに求められるポイントを、大きく4つ紹介した。(1)文化:データドリブンな文化を作る、(2)ミッション:データで意思決定を支える、(3)組織:会社のフェーズを見極めて集中と分散のどちらかの体制を選ぶ、(4)アナリストのマネージャーがすべきこと:メンバーのための環境整備――だ。

データドリブンの文化はプロジェクト単位でも実現可能

メルカリ Business Intelligence Team Managerの松田慎太郎氏
メルカリ Business Intelligence Team Managerの松田慎太郎氏

 (1)の文化としてメルカリは、「データドリブンな文化を作ること」、すなわち意思決定の材料としてデータを使うことを掲げている。

 フリマアプリは新機軸であり、EC(電子商取引)事業とは業態が異なる。このため、過去の成功事例は流用できない。一方で、顧客の行動ログや、アンケートによる意識調査の結果は豊富に持っている。これを意思決定に役立てる。

 「データドリブンは会社の文化なので、会社全体がデータドリブンかどうかは、トップ人材の考え方に大きく依存する」と松田氏。とはいえ、ボトムアップによってプロジェクト単位でデータドリブンのアプローチを採ることはできる、と指摘する。

 メルカリが文化を推進するやり方はシンプルだ。(a)プロジェクトの目標設定:KGIの設定、(b)キードライバーの設定:KGIを分解して施策で動かせるKPIを設定、(c)PDCサイクルの遂行――の3つだ。

 松田氏は、(a)のプロジェクトの目標を設定するコツを3つ挙げる。チームの納得感を大事にすること(関係者の合意の上で決めること)、割合指標よりも実数を目標に定めること(実数で見ればクリアに見えてくる)、定義を明確にすること(自分以外が数値を分析することを考えて定義を明確にすること)だ。

 (b)のキードライバーは、KGIを分解し、「動かせそう」で「思想的に合致する」ものを目標に定める。例えば、売上目標は「購買者数×1人当たりの購買数×商品単価」で表現できる。ここから、最も実現可能性が高い、購買者数を増やすことを狙いに行く、といった具合だ。

 このケースの場合、1人当たり購買数を増やす施策を採ろうとすると、よく購入するヘビーバイヤーを優遇することになるかもしれない。良い施策ではないので、これは避ける。また、フリマにおいて商品単価を上げることは、そもそも難しい。一方で、購買者数は施策やアイディア次第で高められる。

 (c)のPDCの遂行として、ダッシュボードを毎日見ることが大事だと松田氏は説く。「ダッシュボードを毎日チェックすると、チームがデータドリブンになる。楽しいダッシュボードは人気が出る。予測と実績の併記も大切だ。毎日見ていると、いろいろ見えてくる。なぜ予測が外れたのだろう、とか考えだす」(松田氏)

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