製造業のディスラプションはこれから--アクセンチュアが考える「日本企業の勝ち残り」に必要なこと - (page 2)

河部恭紀 (編集部)

2019-06-24 07:45

 だが、これら「5つの壁そのものが構造的に日本企業の不得手なところになってしまっている」と田村氏は述べ、次のような例を示した。

 日本企業の場合、たとえば、経営が損益計算書(PL)視点であることから、過去の売り上げやコストを元に延長線上(線形)で未来をとらえがちだ。このような単純化された経営モデルゆえに論理思考偏重となり、不確実性の高い大胆な投資が困難になっている。

田村憲史朗氏
田村憲史朗氏

 リスク回避型の経営システムは多階層承認プロセスを生む原因となっており、スピーディーな動きが不得手。その一方で、思い切った方向に舵を切っても同じ方向に皆で動くのを苦手としている。

 特定市場に特化した効率的な育成システムゆえの自前主義のため、多様性のコントロールがしにくい。これまでと異なるスキルが求められる状況になっても、外部活用よりも自社人材の充足を指向し、結果的に不足に甘んじることとなっている。

 このように「日本企業の構造課題とWise Pivotがなかなか上手く合致しない」なかで、どういう形でそのような状態を抜け出すことができるか。田村氏は7つの指針を示した。

 まず、PL視点から抜け出して“エンタープライズバリュー(EV)”視点に移行。これにより、経営目線の古さという課題を解決する。資本コストが低い現在の環境下では、コストを削減して利益率を向上させることより、成長率を向上させることによるEV上昇のインパクトが大きい。

 EVとは「株式時価総額+有利子負債-金融資産」であり、企業が継続して存在する価値である「将来期間のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引く」のが“カレントバリュー(CV)”だ。「EV-CV」で導き出されるのが“フューチャーバリュー(FV)”である。アクセンチュアによると、日本企業の多くはFVへの期待が低いことで企業価値が低迷しているという。逆にGAFAはFVへの期待がかなり高い。

 未来志向型戦略アプローチの導入。不確実性の高い環境では、個別具体的な机上の経営施策群は機能しないため、目指すべき到達点を策定し、仮説検証サイクルを回しながら柔軟に方向性を変える形へと移行しているという。

 「Liquid Workforce」(流体化する労働力)の活用。これまでとは全く異なる専門家が必要となるため、企業内で持っていなかった人材の調達を外部から可能にする。

 より高次元なデータ蓄積とアナリティクス。従来型のビジネス企画アプローチに高次元なデータとアナリティクスを組み込めれば、より迅速に効果試算や市場の先読みができるため、活動の手戻りやとん挫を防止できる。

 創業経営者獲得志向型の合併・買収(M&A)。直面している危機感への感度を高め、創業経営者を“生かす”形でのM&Aで先手を打つ必要がある。

 一歩を踏み出すためのオープン化。たとえば、関西電力は、デジタル技術活用によるグループの業務変革や新規事業の創出を目的とした新会社をアクセンチュアと共同で設立したという。

 新たな意思決定システムの構築。新たな経営指標を設定するなど、旧来の意思決定システムとは異なる意思決定のあり方が必要になる。

 「日本企業がWise Pivotしていくのは非常に難しい」と田村氏は述べる。そのため「本質的に何かを変える必要がある」という。

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