博報堂DYホールディングスは6月19日、企業の商談時の対話音声を解析し、効果測定と評価レポートを自動生成する対話音声解析システム「CONOOTO(コノート)」を開発したと発表した。提供開始時期は、2019年7月を予定している。
これまで企業の営業担当者による顧客との商談の効果測定は、日報などの報告情報や売上情報などに基づいた分析が一般的で、個人に適した営業活動の改善やトレーニングの実施、現場課題の正確な把握は困難だったという。
CONOOTOは、スマートフォンとタブレットに対応したアプリ。デバイス内蔵マイクが商談時の対話を録音することで、営業担当者と顧客が発した重要キーワード数や、会話のキャッチボール比率、話速・音声の周波数などを観測すると博報堂DYホールディングスは説明する。顧客の感情変化などを測定・分析することにより、商談ごとの音声解析結果レポートを自動生成する。これにより、営業活動の状況把握や効果的なトレーニングの実施が可能になるとしている。さらに、営業情報と録音情報を照合することで、個別商談の評価への活用や個別顧客の関心領域の分析ができるという。
CONOTOのイメージ図(出典:博報堂DYホールディングス)
録音されたデータは、NICEの音声蓄積サーバーに自動転送される。そして、各顧客企業のSFA(Sales Force Automation:営業支援)システムと連携した上で、博報堂プロダクツが管理・運用する分析サーバーに転送される。各顧客企業が持つ営業トレーニングの手本データ、音声認識エンジン独自解析アルゴリズム、音声認識ソフト「AmiVoice」、NICEの音素検出技術の4つを融合することで、商談時の顧客と営業担当者の会話を分離し分析する。
音声分析結果レポートサンプル(出典:博報堂DYホールディングス)
録音データ出力画面、スコアの計算方法は顧客企業と相談した上でカスタマイズする。現時点で対応可能なデバイスはiOSのみ。録音・蓄積した音声データは、博報堂プロダクツに委託し、同社が自社運用するデータセキュリティーセンターで運用する。
録音データ出力サンプル(出典:博報堂DYホールディングス)
青が顧客、赤が営業担当者の会話領域の時間推移が表示される。良い商談事例では得意先の反応が定期的に引き出せているが、悪い事例では営業担当による一方的な説明に終始してしまっていると分かる。商談全体を通した会話比率は、表の上部で確認できる。
CONOOTOの提供に当たり、導入を検討してもらうため概念実証(PoC)サービスを設定、導入活用方法を決めてもらう形で導入検討サービスを用意している。当初は主に製薬企業への提供を想定しているが、顧客との面会商談を重視する自動車販売、不動産販売、金融サービスといった業界でのPoCサービスの受付も開始する。
特に製薬業界向けには、顧客企業が保有する自社の営業活動情報を博報堂DYホールディングスの市場調査データと連携させることで、売上効果予測精度を向上させるシステムの開発も進めていくと同社はコメントしている。
今後、企業が自社で保有する営業やマーケティング関連のデータ、営業担当者別の訪問履歴情報、博報堂DYホールディングスの売上効果予測システムを連携させることで、最適化された営業商談計画の提供を目指すという。