Oracleがクラウドで立ち遅れているのは周知の事実で、同社の共同創業者兼最高技術責任者(CTO)Larry Ellison氏は遅れを挽回するのに必死である。同社のそうした取り組みの一環として、Oracleは新興企業向けのプログラムを刷新した。大きな網を投げて、できるだけ多くの起業家を引きつけ、将来を担う技術リーダーとの関係を育みたい考えだ。
Oracleの新興企業プログラム担当バイスプレジデントのJason Williamson氏は、「収穫するには、種を蒔かねばならない。今から3〜5年後には、最も注目のユニコーン企業が、『Oracle Cloud』を利用しているだろう」と述べた。
Oracleはこれまで、世界各地にある新興企業向けのオンサイト(常駐)型のインキュベーションプログラムを通して、一握りの新興企業を支援してきた。しかし今回、同社プログラムの門戸を広く開放し、地理的な場所に関わらず、新興企業を受け入れることにした。参加する企業はクラウドの無料クレジットのほか、クラウド料金の70%割引、そしてメンターシップの機会を得られる。さらに、Oracleのエコシステムと顧客基盤にアクセスできる。
ここまで読むと、聞いたような話だと思うかもしれない。それはAmazon Web Services(AWS)がインフラコストを抑える必要がある新興企業向けに「AWS Activate」というプログラムを提供していたからだ。Airbnb、Slack、Lyftなどの企業はすべてこのプログラムを活用し、AWSはその間、市場シェアを拡大して、クラウドコンピューティングのリーダーとして立場を確立した。
しかし、Williamson氏に言わせれば、Oracleはほかのクラウドプロバイダーが太刀打ちできないメリットを新興企業に提供できるという。それは何十年にもわたり、エンタープライズ分野に深く入り込んで、製品を販売してきた実績だ。
Williamson氏は新興企業のコミュニティーについて、「クレジット以上のものがほしいという声があがっている。多くの新興企業は技術だけでなく、真のメンターシップの機会を求めて当社にやってくる」と説明した。そうした新興企業は、営業チームの編成や、アナリストおよびPRチームとの協業といったスキルを学びたいと考えている。
さらに、エンタープライズに重点をおいたベンチャーに取り組む新興企業は、彼らが必要とする顧客基盤をOracleが持っていることを認識しているという。またOracleの顧客も、新興企業と関わるのに意欲的だ。
「大手企業はすべて、自社にベンチャー部門かインキュベーターがある。そうした企業は当社に、『どんな新興企業と取引がある?協業の可能性は?』と尋ねてくる」(Williamson氏)
Williamson氏によれば、Oracleが2017年頃に立ち上げた新興企業プログラムは好評だった。わずか80社の受け入れ枠に約4000件の応募があったという。しかし、オンサイト型のモデルだったため、受け入れられる企業の数が限られていた。
Ellison氏はプログラムがCTOの管轄下になった際に、「成功する新興企業とそうでない企業を推測しなくてすむように」プログラムを拡大することを提案した。
Oracleは成果をあげる新興企業には、より多くの便益を図る計画だが、そうでない企業も「Oracle Cloud Platform」に対して好意的な印象を持ってもらうことを期待している。
「当社の狙いは、低価格で高性能のクラウドを提供している企業が1〜2社ではないことを、新興企業に理解してもらうことだ」(Williamson氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。