アクセンチュアは6月28日、産業ロボット向けの制御用ソフトを提供するMUJINと協業を開始したと発表した。物流領域のデジタル変革を進めるため、人工知能(AI)やロボットを活用したサービスを共同で開発、提供していく。
MUJINは産業用ロボット向けの共通基盤を開発・販売する新興企業。ロボットを制御するコントローラーに汎用性を持たせることで 、違うメーカーのロボットアームでも一元的に制御できる点が特徴。メーカーごとに操作方法を覚える必要がなく、ロボットの操作性を統一させることができる。
また、「モーションプランニング(動作計画)」と呼ばれる人工知能(AI)技術を組み込むことで、ロボットに必要な動作を教えることなく自律制御できるようになる。同社ではこれを「知能化」と呼んでいる。
MUJINが提供するロボットコントローラーの概要
同社では既に、アイシン・エィ・ダブリュやアスクル、キッツ、JD.com、PALTEKなど、世界トップクラスの製造工場や物流倉庫でオペレーションの自動化を支援している。
アクセンチュアはMUJINとの協業により、業務適用型AIサービス「Accenture AI Powered Services」のサプライチェーン管理向けサービス「AI Powered SCM」を強化する狙いがある。
Accenture AI Powered Servicesは、複数のAIエンジンから最適なものを組み合わせ活用する「AI Hub」プラットフォームを中核に、これまで同社がAIサービスの開発と提供で培ってきたノウハウを業務レベルまで落とし込んで体系化したもの。SCMの他にも、コンタクトセンター向け、バックオフィス向け、対面接客向け、マーケティング向け、セキュリティ向けなどのサービスがラインアップされている。
AI Powered SCMは、需要予測や計画最適化などのAI技術を用いることで高精度化し、それをもとに設備やロボットに指示を出すことでバリューチェーン全体での省人化や無人化を進める。またパーソナライズされた製品が顧客の望むタイミングで届く世界の実現も目指す。
AI Powered SCMの概要
アクセンチュアとMUJINの協業では、まず倉庫オペレーションの自動化や可視化に取り組む。アクセンチュアがバリューチェーン全体の情報に基づいて倉庫オペレーションの最適化に必要な指示を出し、MUJINが倉庫の最適化を実現する倉庫全体の意匠設計やロボット設計・周辺設備との連携を行う。
従来、物流倉庫は手作業が中心の過酷な現場とされていたが、ロボットを自律的に動かせるようにすることで、取り扱う対象物や周辺状況が細かく変わる倉庫のような環境においても柔軟な対応が可能になるという。
物流分野における労働人口の減少は深刻な問題となっており、限られたリソースでより高い生産性を目指さなくてはならない状況に置かれている。そうした中、「産業ロボットが必須の時代」が来るとMUJINの最高経営責任者(CEO)で共同創業者の滝野一征氏は話す。
(左から)アクセンチュアの保科学世氏、MUJINの滝野一征氏、アクセンチュアの江川昌史社長、同 立花良範氏