課題解決のためのUI/UX

ゆがんだグラフと「だます」デザイン--混乱や誤解を招かないために

綾塚祐二 2019年07月03日 07時00分

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 情報の伝え方を設計することを「情報デザイン」と呼ぶ。以前の記事で話題にしたように、情報の構造や内容に沿った視覚的なデザインを行うことで、さまざまな情報が受け取り手に伝わりやすくなる。逆に見た目のレイアウトの構造と伝わるべき情報の構造が食い違っていると、受け取り手に混乱を与えたり、誤解を招いたりする。

 その食い違いを意図的に作り出し、受け取り手をだまそうとする者も、残念ながらいる(ダークパターンの一種である)。また、意図的ではなくとも、無意識のうちに構造をゆがめた情報デザインにしてしまう人々もいる。単に知識不足でそうしたデザインになってしまうこともあるだろう。

 そのようなゆがんだ情報デザインが顕著に出る例が、統計情報などを見せるグラフである。棒グラフや折れ線グラフなど、各種のグラフは適切に使えばとても効果的に情報を伝えることができる。しかし、グラフが実際に表すべき情報と違う視覚的な情報を持ったデザインを強引に適用することで、見た目や印象として伝わる情報は全く違うものになってしまう。今回は、こうしたゆがんだグラフなどについて考える。

棒グラフ

 棒グラフの主たるメリットは、複数の量的な要素を比較したり、それらの変化の様子を捉えたりしやすいという点である。例えば、図1の左上のような数値データがあったとして、表では各項目の数字がどれくらい違うか、(時間変化を表しているとして)どれくらい変化があったかを把握するには認識の手間が掛かるが、右下のようなグラフにすると一見して把握できる。

図1
図1

 これを、スペースの都合なのか差を強調したいのか、下半分を端折って図2のように描いてしまっている例をプレゼンや映像メディアなどでしばしば見かける。これだと、(事実に反して)“2016”に対応する数値が“2018”に対応する数値の1.5倍程度であるように、見る側に(少なくとも一瞬は)思い込ませてしまう。これは決して描いてはいけないグラフの1つである。

図2
図2

 グラフの作法としては図3のように「途中が省略されている」ということを明示すればまだ許容できる可能性がある。それでも、「数値の変化の傾向」などを見せたい場合などに限るべきで(その場合も折れ線グラフにすることなどを検討すべきだろう)、「数値の絶対的な大きさ」が主眼になる場合は使うべきではない。

図3
図3

 なお、グラフの作法としては各グラフに「何のグラフであるか」「縦軸・横軸の表す数値は何であり、単位は何か」などを明示せねばならないが(見る側もそこに注意を払わねばならない)、本稿では視覚的要素により与えられる印象の説明のためにそれらを省略している。また、各数値はもちろんダミーのデータである。

円グラフ

 割合を比較したい場合によく用いられるのが円グラフだが、実は不用意に使ってはいけない。特に、立体感を持たせた円グラフ(3D円グラフ)はその代表格である。表計算ソフトなどで容易に表示できスタイリッシュな気がするからか、安易に3D円グラフを使っている人も多い。それをプレゼンなどで使おうものなら、聴衆に「だます意図がある」と思われても仕方がないのである。

 まずは普通の円グラフから見ていく。図4は5つの要素を比較した円グラフである。Aの割合が最も大きいことはすぐに分かるであろうが、BとCの差は分かるであろうか。この場合は順番的にもBがCより小さいことはないだろうと理解できる(そこに付け込む悪意もあり得るので気を付けたい)が、どれくらい差があるかを把握するのは容易ではない。

図4
図4

 円グラフは角度によって各要素の割合を表すが、棒グラフの場合と違って一端をそろえて表示されることはないので、そもそも要素間の比較がしづらい。向いている方向もばらばらなので、離れたところの微妙な差は分かりづらい。図4のBとCの数値の比は10:9である。10%ほど違うわけであるが、その差を把握できるだろうか。

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