システムインテグレーターのTISは7月1日、AI(人工知能)を使って企画の立案などを支援するサービス「AIブレストスパーク」の正式提供を開始した。月額利用料は1ユーザー当たり税別7500円で、契約期間は3・6・12カ月の3種類。ベータ版は6月に公開されており、正式版には「他人アタマで考える」と「連続刺激モード」といった新機能が搭載されている。
AIブレストスパークは、AIがブレインストーミングを主導することで、企画の立案を手助けするサービス。企業のマーケティング部門などが対象になる。ウェブ上のデータから固定概念にとらわれないアイデアを提案することでユーザーの視野を広げ、結果として斬新な企画やキャッチコピーを生み出すことに貢献すると両社は説明している。
博報堂は「博報堂発想支援メソッド」として自社のノウハウをTISに提供。博報堂で受け継がれている鉄則「拡散と混沌なくして、跳躍なし」をもとに、以下5つの機能が搭載されている。
1. ひらめきマップ
キーワードを入力すると、マインドマップのように関連語が表示される。AIが200~300個のウェブサイトを収集し、キーワードを含む文から他の単語を洗い出す仕組みだ。関連語は、キーワードと一緒に使われる頻度が高い順に並べられている。キーワードと関連語の関係が分からない場合は、出典先を確認することができる。
2. ブレストアイデア
キーワードと「ひらめきマップ」で表示された関連語を結合する機能。「ちょい悪」など新しい発想の多くは、本来結び付かない単語でできているという。加えて、さまざまな単語と親和性が高いとされる「アシストワード」、SNSで話題になっている「トレンドワード」、最近のはやり言葉「JK用語」とも結合させられる。
3. ノート
気になった言葉をマウス操作で取り込んだり、新たに浮かんだアイデアを入力したりできる。博報堂がブレインストーミングで実施している「メンバーが良い発言をすると付箋に書いて壁に貼り、壁が付箋でいっぱいになったらグループ別に分ける」という方法が再現されている。これによりユーザーは、自分たちの嗜好を認識できるという。
4. 他人アタマで考える
アイデアが思い浮かばなくなった時のために「作詞家アタマ」「主婦アタマ」「ビジネスアタマ」が用意されている。それぞれウェブ上の歌詞、主婦ブログ、ビジネスニュースから、単語が収集されている。趣を出したい時は作詞家アタマ、生活感を出したい時は主婦アタマ、堅い雰囲気にしたい時はビジネスアタマと使い分けられる。
(出典:TISインテックグループ)
5. 連続刺激モード
ブレストアイデアで生まれた単語を1行ずつ画面全体に連続表示する機能。グループの皆が考えを出し尽くして沈黙が続いている時に役立つとしている。ブレインストーミングでは、他のメンバーのアイデアを批判してはいけないが、AIブレストスパークは機械なので余計な気を遣わずに済む。
実は元々TIS自身が新規事業の生み出し方に悩んでおり、博報堂に相談していたという。そして、両社がアイデア出しを行うことが多い企画職1032人を対象に調査したところ、「近年『新規事業』や『イノベーション』が叫ばれているが、そもそもアイデアの出し方が分からない」「定型業務と比べて企画の立案は効率化が難しい一方で、働き方改革により労働時間の削減が進められ、結果として休日などの時間外に一人で考えている」といった意見があることが判明した。そこで両社は、企画立案における課題解決に向けて、企画のもととなるブレインストーミングを支援するAIブレストスパークを開発したと説明している。
ベータ版は、博報堂関係の広告・マーケティング業務を行う企業やTISと関係のある企業に勤める1241人に提供された。反響に関しては「企画の立案に直接使えるアイデアが欲しかった」などの意見があった一方で、「自分の脳ではたどり着けないことにも考えを巡らせることができるようになった」といった好意的な声も複数あったとしている。
今後の展開について、TISの担当者は「機能の拡張やスマートフォンでの利用、博報堂の意図を伝える書籍の出版、スマートスピーカーとの連動を予定している。スマートスピーカーとの連動では、ブレインストーミングの実施場所にスマートスピーカーを置き、録音されたグループの発言からキーワードを抽出してアイデアを提供したい。2019年度中に3万ユーザーの達成を目指している」と述べた。