ビジネスインテリジェンスを“民主化”させる--新興BIのインフラジスティックス

阿久津良和

2019-07-05 06:00

 インフラジスティックス・ジャパンは7月2日、アプリケーションにビジネスインテリジェンス(BI)のダッシュボードを組み込めるデータ可視化ソリューション「Reveal」の国内提供を発表した。Revealは、ユーザー単独や部署単位での利用に加えて、DockerコンテナーやKubernetesといった技術を利用して、クラウド環境にも配置できる。米Infragistics 開発ツール担当シニアバイスプレジデントのJason Beres氏と、インフラジスティックス・ジャパン 代表取締役の東賢氏に、BIソリューションの現状と後発となるBI市場への参入について聞いた。

米Infragistics 開発ツール担当シニアバイスプレジデントのJason Beres氏(右)と、インフラジスティックス・ジャパン 代表取締役の東賢氏
米Infragistics 開発ツール担当シニアバイスプレジデントのJason Beres氏(右)と、インフラジスティックス・ジャパン 代表取締役の東賢氏

--2016年にモバイルダッシュボードの作成と共有に焦点を当てた「ReportPlus」をリリースしている。既存のBIソリューションが多くの課題を抱えているとして「Reveal」を提供するというが、その経緯はどのようなものか。

Beres:われわれはエンドユーザーのユーザー体験(UX)を非常にシンプルなものにしたいと考えてきた。現在の市場に提供されているBI製品は複雑もしくはレガシーだと思う。新興のBIソリューションベンダーも複雑な機能を用意する傾向が強く、彼らの実装は美しくない。例えば、IBMは古めかしいUXを採用し続けているが、UXは製品の鍵を握る存在だ。

 加えて、全ての市場における組み込み型のBIソリューションベンダーは価格を明確にしていない。アプリケーションにBIソリューションを組み込む際、どれだけのコストが発生するのか不明瞭だ。自身がプロダクトマネージャーだった場合、特定のソリューションを比較しなければならないが、コストが明確でないと判断を下せないだろう。

 技術的な差別化要因も説明できるが、RevealはUXと価格の明確化が大きなポイントだ。ReportPlusとRevealの相違点で最も大きいのはSaaSになる。ウェブベース製品への注力だ。UXという観点ではReportPlusも優れているが、顧客の要望で多いのはHTMLアプリケーションの提供だった。われわれがRevealを提供した理由の1つは、パートナーベンダーがアプリケーション内に組み込んだ状態でも、ダッシュボードを編集したいという需要があったからだ。これはReveal固有の新機能になる。組み込み型のBIソリューション「Reveal Embedded」のSDK(ソフトウェア開発キット)は、デスクトップアプリケーション向けに、.NETもしくはHTML、iOSではObject-C、AndroidならJavaを利用できるのもユニークなポイントだ。

--Revealは単独のアプリケーションやSaaS、組み込みでも同一のUI/UXを実現している。その上でグローバルの組み込み型BIソリューション市場の規模と日本市場の動向をどう見ているのか。

Beres:Gartnerは、2020年までにBI市場が1200億ドル(約12兆円)へ成長すると予測しており、その中で組み込み型BIは50~80億ドル(約5000~8000億円)を占めるという。もちろんGartnerの予測は常に調整されるが、それでもわれわれはBIが大きな市場だと認識している。

東:日本としては、長年にわたってUIコントロールを顧客に提供し続けてきた。モダンアプリケーションを実現するための「WPF(Windows Presentation Foundation)」コントロールを通じて生産性向上に取り組んでいる。さらなる効率性の向上を図るためのBIソリューションもしくはデータの可視化に対する需要が汎用的に存在すると認識している。

 われわれの既存顧客にもこれらの需要があることは明確だ。Beresが述べたように、多くのBI製品は複雑で、例えば100の機能を持ったBIツールでも、20程度の機能しか使いこなしていないユーザーが圧倒的に多い。だが、設定価格は100の機能を前提としている。この機能と価格のバランスをシンプルにすることで、保守的な日本市場でも会計ERP(基幹系情報システム)にわれわれのソリューションを導入する顧客が存在する。

--Revealはマルチデバイス対応だが、顧客の需要が高まっているということか。

Beres:ソリューションを提供する際に「モバイルに対応している」か否かが問題だろう。ReportPlusはiOS版をApp Store経由で提供し、毎月1万5000~2万ダウンロードされている。組み込みで利用している顧客がモバイルアプリケーションを確実に利用しているという裏付けはないが、製品に(ReportPlus Embeddedが)組み込まれた場合、顧客企業が作成するカタログで「モバイル対応」を記述できるかは、マーケティングとしても重要だ。

 当然ながら新世代はモバイルネイティブであり、スマートフォンやタブレットだけを利用する傾向にある。これはグローバルでのトレンドだ。もちろんモバイルに対しては、ウェブアプリケーションを単純に稼働させるのではなく、ネイティブアプリケーションを提供しなければならない。

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