RPAは1人1台の時代に--NTTデータが語る現状と今後

藤本和彦 (編集部)

2019-07-04 07:00

 NTTデータは7月2日、「RPAの現状と今後の展望」と題した記者向けセミナーを開催した。社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 デジタルソリューション統括部 RPAソリューション担当 課長の中川拓也氏によると、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)はスマートフォンやクラウドよりも速いペースで成長しており、やがて「1人1台の時代になる」という。

 その裏には、労働力人口の減少や働き方改革、デジタル変革をはじめとする事業領域へのIT活用をはじめとする社会的な背景がある。それに加え、RPAは業務自動化に対する即効性の高さや業務部門が主導できる分かりやすさも後押しの要因となっている。

NTTデータの中川拓也氏
NTTデータの中川拓也氏

 NTTデータにおいても、RPA基盤「WinActor」の導入企業数が2018年度末に3000社を突破するなど堅調だ。そうした市場の盛り上がりを受け、ツールの高度化や管理統制の強化、教育サービスの展開などにも広がりを見せている。

 例えば、同社は2018年4月にRPAの技術検定サービスを開始しており、全国9拠点のトレーニングセンターで1万人超の参加者が合格/修了しているという。「資格の有無を名刺や履歴書に記載する人もいるなど、スキルセットとして定着してきている」(中川氏)

 RPAの活用が進むにつれ、管理されない状態で放っておかれた“野良ロボット”への対策やガバナンスの統制、実行状況の監視など、運用効果を最大化するための仕組みが求められるようになってきた。NTTデータでは、サーバーやPCで稼働する複数のWinActorを一元管理するための運用ツール「WinDirector」を提供するほか、周辺ツールや業務シナリオなどをマーケットプレイスで購入できるようにしている。

 これまで、RPAは定型業務を対象としていたが、最近ではAI(人工知能)を用いた非定型業務の自動化にも期待が集まっている。中川氏によると、RPAの活用で先行する欧米では、RPAとAIを組み合わせた手法を「Intelligent Process Automation(IPA)」と言い、この呼び名の方が定着しているという。

 特に注目されているのがAI-OCRによる紙帳票のデータ化と入力業務の自動化である。OCR(光文字認識)にAI技術を取り入れることで、従来型と異なり、文字枠(ピッチ)のない、自由記入方式の手書き文字を読み取れるようになる。漢字やカタカナ、数字、英字などの混在や印影の重なりなどにも対応できるほか、帳票レイアウトを事前に設定しなくても、AIが読み取り箇所を自動で抽出するといったことも可能になる。

AI-OCRの特徴
AI-OCRの特徴

 NTTデータは、LGWAN(行政専用閉域ネットワーク)を活用したAI-OCRサービスを地方公共団体向けに提供している。手書きの各種申請書類をスキャンした画像ファイルをLGWAN経由でAI-OCRサービスにアップロードするだけで、自動変換されたテキストデータをCSV形式で取得できるものだ。これにRPAツールを組み合わせることにより、基幹システムへのデータ入力までを自動化する。

 セミナーではほかにも、AIを使った電話応対システムや非接触ハンドセンサーとRPAを組み合わせた活用例なども紹介された。

 「銀行がRPAによるコンサルティングサービスを開始したり、松山市がRPA導入支援の補助金制度を導入したりするなど、RPAを起点とした社会変革が始まっている」と中川氏は話す。

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