中国の大手サイバーセキュリティ企業Qihoo 360(奇虎360)のネットワーク脅威探索チーム「Netlab」の研究者らによって、「DNS Queries over HTTPS」(DoH)プロトコルを悪用する初のマルウェアが発見された。
「Godlua Backdoor」と名付けられたこのマルウェアの詳細は、現地時間7月1日付けのNetlabチームのブログ上で公開された。
Netlabチームによると、Godlua Backdoorはプログラミング言語Luaで記述されたマルウェアの一種であり、感染したシステム上でバックドアとしての機能を果たすという。Godlua BackdoorはLinuxサーバー上で動作するようになっており、攻撃者は「Confluence」の脆弱性(CVE-2019-3396)を悪用し、最新のパッチが適用されていないシステムを標的にしている。なお、Googleのウイルススキャンサービス「VirusTotal」にアップロードされた初期のサンプルは、暗号通貨採掘目的と誤認識されていた。
しかしNetlabの研究者らによると、このマルウェアは実際のところDDoSボットだという。そしてこのDDoSボットは、Liu Xiaobeiのファンサイトのホームページであるliuxiaobei.comを標的とする攻撃で実際に使用されたことが確認されている。
DoHによる受動的DNS監視の回避
研究者らはこれまでに、同様のアーキテクチャーを備えた2種類のGodlua Backdoorを発見している。いずれもDoHリクエストを用いて取得したドメイン名のTXTレコードから、後続ステージにあるCommand and Control(C&C)サーバーのURLを取得し、そのURLへの接続によってさらなる命令を待ち受けるようになっている。
DNSのTXTレコードから第2/第3ステージにあるC&CサーバーのURLアドレスを取得するというテクニックは新しいものではない。しかし、従来のDNSリクエストではなく、DoHリクエストを使用するというところが今までになかった点だ。
DNS Queries over HTTPSという名前が表すように、このプロトコルはDNS情報を、従来のUDPリクエストを用いたプレインテキスト(平文)形式ではなく、暗号化されたHTTPS接続によってやり取りするようになっている。
こういったDoH(DNS)リクエストは暗号化され、第3者からは内容を判別できないため、悪意ある既知のドメインへのリクエストを受動的DNS監視によってブロックしようとするサイバーセキュリティソフトウェアでさえもその存在を把握することができない。
なおDoHプロトコルの詳細については、Internet Engineering Task Force(IETF)の「RFC 8484」で文書化されている。
「Firefox」や「Google Chrome」といった主要ブラウザーは既にDoHをサポートしている。またGoogleは6月に、同社のパブリックDNSサービスでのDoHのサポートを発表し、受動的DNS監視に基づいてインターネットトラフィックのフィルター処理やブロック処理を実施している国のユーザーに向けて無償で提供している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。