便利さに加えてエモーショナルな世界を--「KDDI 5G SUMMIT 2019」講演

大場みのり (編集部) 2019年07月08日 16時02分

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 KDDIは6月27日、都内で5G(第5世代移動体通信システム)によるサービスを紹介するイベント「KDDI 5G SUMMIT 2019」を開催。展示とともに実施された講演では、同社のライフデザイン事業企画本部 ビジネス統括部長を務める繁田光平氏が登壇し、5Gによる現実世界の進化について語った。

KDDIの繁田光平氏
KDDIの繁田光平氏

 「5Gの到来により、リアルとデジタルの融合が進むだろう」と繁田氏は話す。現実世界がデジタル化されると、ウェブページのデザインを改善していくのと同じように、現実における顧客の動きを変えられるようになるという。データの収集、人工知能(AI)による解析、解析結果の反映という流れは既に始まっているが、5Gによってそのサイクルが加速していくと同氏は述べる。通信速度が速くなったり、xR(VR、AR、MRなどの総称)と合わさることで、現実世界の価値が向上するとしている。

 5G時代におけるKDDIのサービスについて繁田氏は「多くの企業は便利さを追求したサービスを提供すると予想されるが、われわれはそれに加えて『楽しい』『応援したい』といったエモーショナルな世界を実現したい。それこそがauで長年、音楽配信をはじめとするエンターテインメントを提供してきたKDDIのビジョンだ」と語った。具体的には、テクノロジーの力でスポーツ会場やライブ会場といったリアル空間の価値を向上させるという。

KDDIが提供しているサービス例
KDDIが提供しているサービス例

 では、リアル空間の価値が向上することで、どういった循環が生まれるのだろうか。繁田氏は「さまざまな体験を臨場感のある映像にして、それらを離れた場所にも届けることができるようになる。そして、コンテンツを体験した人々が『現地に行ってみたい』と思えば、リアル空間にはこれまでより多くの人が集まるだろう。5Gの拡大とともにこういった現象を地方に広げることで、人々をいろいろな場所に連れていきたい」と述べた。

 リアル空間の価値向上の他にKDDIが提供するものとして、繁田氏は「通信料の定額化」を挙げた。同社は5月、月間のデータ容量に上限がない「auデータMAXプラン」を発表。通信料を気にしていては5Gによるサービスを十分に楽しめないという考えのもと、同社は通信料の定額化をけん引していくという。

 KDDIは、リアル空間の価値向上に既に取り組んでいる。同社は2018年9月から、博報堂とともに動物園で飼育されている動物の動画を配信するアプリ「one zoo」を提供。旭川市旭山動物園(北海道)、よこはま動物園ズーラシア、(神奈川県)、天王寺動物園 (大阪府)と提携し、これらの動物園で撮影された映像を毎日配信している。

「one zoo」のイメージ
「one zoo」のイメージ

 「動物園は現在、大きな課題を抱えている」と繁田氏は話す。多くの動物園は、入園者数の減少や、それによる収入減、自治体の財政難といった課題に直面しており、結果として「種の保存」や「命の大切さを学ぶ」といった目的が果たせなくなっているというのだ。

 動物園の入園料は数百円で、なおかつ顧客の大半は昼食に弁当を持ってくるため、動物園における顧客一人当たりの売り上げは非常に少ない。これを受けてKDDIはテクノロジーによる再建を動物園に提案したが、当初は警戒されたという。これまで、幾つものシステムインテグレーター(SIer)が高額なVRの導入を勧めてきたからだ。しかし同社は「映像を撮ってくれたらお金を支払う。なのでVRを使ってほしい」と説明して納得してもらった。

 繁田氏は「飼育員から見たら何でもない日常かもしれないが、アプリのユーザーにとっては新鮮で癒される映像。ユーザーは好きな動物を見つけて、中には個で認識する人もいる。そして『この子に会いたい』と動物園を訪れる。現地に用意されているデジタルスタンプラリーからIDを取得することにより『どのユーザーがどの映像を見てどこに来たのか』ということを把握できる。そして、収集したデータを使って園内を改善することで、ユーザーの再訪につながる」と述べた。

 さらにKDDIは、動物園のようにコンテンツを持っている企業・団体だけでなく、何もないと思われる場所にも新しいものを作ることに挑戦している。その一つが、長崎県西海市の無人島におけるARシューティングゲーム「JURASSIC ISLAND」だ。このゲームは、ハウステンボスのアトラクションとして2018年7月から提供されている。ユーザーがARスコープ付きのモデルガンを持って森林の中を探検しながら、ARスコープ越しに現れる恐竜を撃つ仕組みだ。

「JURASSIC ISLAND」のイメージ
「JURASSIC ISLAND」のイメージ

 繁田氏は「ARによって、無人島がアミューズメントパークになる。さらにxRはソフトウェアなので、ハードウェアに大きな投資をする必要がなく、中身を入れ替えれば別のコンテンツを提供できる。このように元々コンテンツを持っていなくても、技術とアイデアで新しいことができると考えている」と語った。

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