松岡功の「今週の明言」

「IBM Cloudはここが違う」--日本IBMのクラウド事業責任者が力説

松岡功

2019-07-12 10:30

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員と、インテルの鈴木国正 代表取締役社長の発言を紹介する。

日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員
日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員

「企業のクラウド化とはパブリッククラウドへの移行でなくクラウド技術を使うこと」
(日本IBM 三澤智光 取締役専務執行役員)

 日本IBMが先頃、クラウド事業戦略について記者説明会を開いた。同社のクラウド事業責任者で7月1日からクラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長(前はクラウド事業本部長)と肩書きが代わった三澤氏の冒頭の発言は、その会見の質疑応答で、企業のクラウド化とパブリッククラウド利用の傾向について聞いた筆者の質問に答えたものである(関連記事)。

 まずは、その質疑応答のやりとりの前提となる「IBM Cloud」のハイブリッドクラウド戦略について、三澤氏の説明を以下に紹介しておこう。(図参照)

IBM Cloudのハイブリッドクラウド戦略
IBM Cloudのハイブリッドクラウド戦略

 「IBM Cloudの特徴は、レガシーシステム(SoR)とクラウドネイティブ(SoE)といった特性の異なる2つのシステムに対応できるパブリッククラウドであることだ。また、かねてベアメタルのサービスを提供し、3年前からはその上でVMwareを動かすソリューションも手掛けてきた。これにより、レガシーアプリケーションのオンプレミスとパブリッククラウドのハイブリッド化を実現している」

 「クラウドネイティブの世界に関しても、Kubernetesをプラットフォームに据えることで、オンプレミスであれ、他のパブリッククラウドであれ、どこにでもお客さまのワークロードを配置できる。まさにハイブリッドおよびマルチクラウドな環境を、クラウドネイティブの世界でも提供しているのが、IBMの強みであると自負している」

 三澤氏はIBMのクラウド事業戦略について、このところ一貫して「ハイブリッド」を前面に押し出しているが、これはクラウドプラットフォームの話のように聞こえる。そこで筆者は、「例えば、MicrosoftやGoogleは強力なSaaSも併せてクラウド事業全体の勢いを付けようとしている。IBMはSaaSも含めたクラウド事業をどのように考えているのか」と聞いてみた。すると三澤氏は、「もちろん、SaaSも拡充していく」ことを前置きして、冒頭の発言を含めて次のように答えた。

 「企業にとってのクラウド化とは、パブリッククラウドに移行することではなく、そこで使われているクラウド技術を活用するということだ。特に日本企業の場合、いまだに9割以上のアプリケーションがレガシーな仕組みのままだ。それをどこからどのようにモダナイズしていくかというのが、今お客さまからIBMに寄せられている切実な声だ。これが、SaaSも含めてパブリッククラウドだけでビジネスを行っているベンダーと、IBMとの明確な立ち位置の違いである」

 IBMが7月9日(米国時間)に買収完了を発表したRed Hatはクラウド事業部門傘下の独立部隊になるようだ。さらに7月1日から三澤氏の肩書きに加わったコグニティブ・ソフトウェア事業は、IBMのAI(人工知能)技術「Watson」を活用したサービスが中心と見られる。ハイブリッドクラウド戦略は変わらないだろうが、IBMのクラウド事業全体がどんな構図になるのか、注目しておきたい。

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