エンタープライズ情報管理(EIM)ベンダーのOpenTextは、クラウド戦略を進めるに当たってGoogleと手を組んだ。GoogleはOpenTextの優先パートナーとなり、顧客のEIMワークロードをGoogle Cloudへ移行するのを支援し、深いレベルでの製品統合も進めるという。この提携が発表された「OpenText Enterprise World 2019」で同社幹部に、Googleを選んだ背景を聞いた。
2020年からクラウドファーストへ
OpenTextとGoogleとの関係は約1年前にさかのぼる。今回の提携は、これをさらに進めるものとなる。
OpenTextは、コンテンツ管理などのEIM製品をオンプレミスで提供してきた。ここ数年でクラウドとAI(人工知能)戦略を進めてきた。クラウドでは、「OT2」としてSaaSプラットフォームを構築しており、OT2を土台とする「Core」ブランドのアプリケーションの数も増やしている。また、EDI(電子データ交換)の「Business Network」もクラウド製品となる。主力の「OpenText Release 16」では、マネージドサービスなどを提供するが、今回のイベントでは、2020年4月に提供する次期版で“クラウドファースト”とすることを宣言、その名も「Cloud Edition」でコンテナー化により、オンプレミス、クラウドに対応する。2019年の始めに同社は、クラウドを利用する顧客が20%だと説明していた。
OpenText 最高経営責任者兼最高技術責任者のMark Barrenechea氏
顧客のクラウド移行に関してGoogleとの提携は重要な役割を果たす。イベントの基調講演でOpenTextの最高経営責任者(CEO)兼最高技術責任者(CTO)を務めるMark Barrenechea氏は、「OpenTextはGoogle Cloudの優先戦略EIMパートナーとなり、Google CloudはOpenTextの優先クラウドパートナーになる」と述べた。
OpenTextとGoogle Cloud Platform間の製品統合を進め、現行のRelease 16と次期Cloud Editionでは、運用環境、ディザスターリカバリー、バックアップとしてGoogle Cloud Platformを利用できる。Googleの機械学習技術、「G Suite」とEIM機能の統合も進めていくと述べた。共同でのセールス、マーケティングも行うという。Google Cloudとの提携により、OpenTextのクラウド戦略は3層となる。(1)東京や大阪を含め世界中でデータセンターを構築して展開する自分たちのクラウド、(2)続いてGoogle Cloud、(3)Amazon Web ServicesおよびMicrosoft Azureなど顧客の選択したクラウド――だ。(1)と(2)はSLAが一本化される。
このデモとして同社は、アーカイブ製品「InfoArchive」とGoogle Cloud Platform上にあるビューサービス「Brava」、そして、Googleのトランスクリプションと翻訳サービスを使い、コールセンターの顧客との英語での会話をテキストに書き出し、さらにフランス語に翻訳するという様子を見せた。
OpenTextのアーカイブ「InfoArchive」とGoogle Cloud Platformの統合により、クラウド上で瞬時に音声データをテキストにして翻訳できる
Google Cloudでグローバルエコシステム&ビジネス担当コーポレートバイスプレジデントを務めるKevin Ichhpurani氏は、「深いレベルでのエンジニアリングを進める。EIMにあるコンテンツに機械学習を利用することで、新しいサービスの可能性がある」と述べた。そして、クラウドの潜在性について、「全てをクラウドにする。サプライチェーンの最適化やパーソナライズを行う、業界の崩壊につながるサービスを提供する、という3つのステップがある」と説明した。
Google Cloud グローバルエコシステム&ビジネス担当コーポレートバイスプレジデントのKevin Ichhpurani