データ視覚化ツールではなくプラットフォーム--DomoのAPJ幹部に聞く戦略

末岡洋子 2019年07月17日 06時00分

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 データの視覚化ツールとして知られるDomoだが、同社は自社製品を“ビジネスのためのOS”というプラットフォームに位置付けている。同社でアジア太平洋・日本のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャを務めるPaul Harapin氏に、プラットフォームとしてのDomoの戦略について聞いた。

--Domoはプラットフォームというメッセージを強調している。具体的にはどのようなものか。

 Domoは視覚化ツールを思われているが、われわれは一からプラットフォームを構築し、“7サムライ”(関連記事)として、7つの別々の会社といっていいほどの幅広い機能を構築してきた。そして、モバイルファースト、クラウドファーストでもある。複数の企業から技術を取得し、統合した体験を構築しようとしても難しいが、Domoならモバイルとクラウドの時代においてビジネスを動かすために必要な機能を提供できる。

Domo アジア太平洋・日本のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのPaul Harapin氏
Domo アジア太平洋・日本のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのPaul Harapin氏

 自動車に例えると、顧客が欲しいのは車であってパーツではない。パーツを自分たちで組み合わせても、素晴らしい体験は提供できない。Domoなら小さな車、大きな車、中規模の車と、さまざまなサイズの車を用意できるし、顧客やパートナーが機能を拡張できる。「視覚化」は1つの機能に過ぎず、車で言えばタイヤかもしれない。だが、Domoにはエンジンもシートもある。

 今後、「Domoはプラットフォームだ」ということをプッシュし、Domoによってできることや潜在性を理解してほしいと考えている。

--Domoをプラットフォームとして利用する日本の顧客事例はあるか。

 ローソンには、全店舗の売り上げやサプライチェーンに関する情報を理解したいというニーズがあった。全体の情報を把握することで、リアルタイムに意思決定ができるからだ。ある製品の売れ行きが良いとき、売れているその瞬間に在庫が必要で、(情報を把握できるのが)3日後では遅い。近隣の他店舗でも同じようなニーズがあるのか知りたいはずだ。これにより、サプライチェーンを最適化できる。ある情報だけ見ても、全体で何が起きているのかは理解できないが、Domoをプラットフォームとして利用し、さまざまなアプリケーションやシステムから情報を集めることでリアルタイムに意思決定できる。

 また、化粧品業界のある顧客は12カ月でオンラインの売り上げを増やすことに成功した。Domoを使って1年でオンラインの売り上げを600%近く増加させたが、その理由はマーケティングチームが在庫データにアクセスできるようになったからだ。それ以前のマーケティングチームは、在庫データにアクセスできない状態でキャンペーンを打っていたが、Domoで過去24時間の在庫データからアラートを受け取れるようにした。これで、特定の口紅が在庫切れになると分かれば、その商品のマーケティングキャンペーンをしないといったことができる。他方でマーケティングが在庫データにアクセスし、在庫のある商品のマーケティングキャンペーンを打つようになっただけで、売り上げが大幅に増加したという事例だ。

 ローソンや化粧品業界の企業の事例から言えるのは、正しい製品を正しいタイミングでマーケティングするには情報が必要だということ。データはその瞬間にパワフルでも、古くなれば意味のない情報もある。Domoをプラットフォームとして利用することで、データを組み合わせて起きていることを把握し、適切なアクションが採れる。さらに拡張性があり、理解しやすい形で視覚化できる。

--顧客に、Domoのプラットフォームとして能力は浸透しているのか。

 十分には浸透していない。引き続き、“プラットフォームのパワー”としてプッシュしていく。

 具体的には、営業がCIO(最高情報責任者)と会話している。CIOは一部の事業部門ではなく、会社全体のシステムを見ている。システムの拡張や統合などの問題を抱えており、既存のアーキテクチャーに統合できるというDomoの特徴は魅力だと感じてもらっている。Domoのプラットフォームには、APIを持つオープン性という特徴があり、既存システムと統合しながら中央のデータのガバナンスおよび管理、ディストリビューションポイントになれる。

 ユーザーがデータウェアハウスにアクセスするのではなく、これらとDomoを接続し、Domoからユーザーに提供できる。もちろん、ガバナンスや監査機能があるので、誰がデータにアクセスするのかを管理できる。企業のセキュリティシステムやシングルサインオンシステムに統合し、誰が何にアクセスできるかを管理することができる。また、新機能の「Dynamic Personal Data Permission(PDP)」を利用すれば、個人ではなく所属部署や役割に応じてもアクセス権限を付与できる。

--CIOへのアプローチは、事業部門とは異なる。どのように進めているのか。

 部門トップとの会話を継続しているが、ITとの関わりを大切にしており、IT部門とやりとりした経験のある人材を積極的に起用している。日本ではシステムインテグレーターとの提携が重要で、重点課題の1つと見ている。また、Deloitt、PwCなどのコンサルティング企業とも積極的に協業している。

 特定の部門から周辺へ横に広がるケースも多い。日本のある通信企業の場合、まず営業部門が最初にDomoを採用し、その後に拡大して財務などさまざまな部門で使ってもらっている。最終的にはCIOやCFO(最高財務責任者)など、“Cレベル”がDomoの全社導入を決めるパターンが多い。

--“データ主導の企業”となるには文化も重要だ。日本市場の課題は。

 日本企業はプロセスを重視し、プロセス通りにすることを好む傾向が強い。Domoが実現していることはデータを使うプロセスでもあり、日本の階層的な組織にフィットすると見ている。そして日本は、技術の受け入れという観点ではアーリーアダプターの市場でもない。用心深く、品質を重視する企業が多い。だが、Domoでは逆で、日本の小規模な企業だけではなく、大企業にも受け入れられている。Domoにとって日本は重要であり業績も良い市場だ。

 データ主導になるためには、リーダーのコミットが必要だ。デジタル時代は、高速に動く必要がある。ここで伝えたいのは、技術ではなくビジネスのバリューを考える必要性だ。リーダーが文化を主導するので、トップがデータを使うようになると変化が速い。Domoは、この変化を支援できる。そのためのトレーニング、意識改善の策、サポートなどを展開している。トレーニングでは、オンライントレーニングとして動画を始めとした学習コンテンツを充実させ、日本語化している。これがプラットフォームに組み込まれている。

--データの視覚化ツールではなくプラットフォームとなれば、競合も変わってくるのか。

 視覚化は、Domoの1つのパーツに過ぎない。競合の中には、視覚化のみを得意とするところもある。その場合、顧客はそれ以外の技術を自分たちで組み合わせる必要がある。Domoは、接続のためのフレームワークを構築し、「Integration Cloud」をもつ。これを利用して600以上のデータソースをすぐに組み合わせられる。データウェアハウスやデータを準備するためのETLツール、接続するツールなどさまざま技術が必要になるものの、Domoはプラットフォームに組み込んでいるし、Integration Cloudは別に購入することもできる。これが統合されたDomoプラットフォームを利用することもできる。

 Domoのプラットフォームには、エンタープライズコラボレーションが統合されており、ここにも競合がいる。また、人工知能や機械学習でも競合がいる。プラットフォームにデータサイエンスの機能を追加したが、やはりここでも競合がいる。

 例えば、在庫が少ないというアラートが出るとしよう。接続されたワークフローによって、購入担当が在庫を見てベンダーへの発注を増やすことを承認し、自動化スイートから直接発注できる。これは視覚化ではなく、ビジネスマネジメントの分野だ。スマートフォンからこうしたビジネスを動かせるがDomoの差別化だ。

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