本記事は楽天証券が提供する「トウシル」の「TOP 3分でわかる!今日の投資戦略」からの転載です。
今日のポイント
- トヨタが一時、年初来高値
- 自動車産業は成長産業
- 割安でも買われない自動車株、3つのリスクが重荷
- EVの人気が急に高まったのはなぜか?
- 自動車関連株の投資方針
これら5点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
トヨタが一時、年初来高値
7月22日の東京市場でトヨタ自動車(7203)株が一時7128円と年初来高値をつけた(終値は7091円)。世界景気への不安、貿易戦争激化の不安が残る中、自動車株は買いにくいムードが続いていた。ここに来て、改めてトヨタが評価された理由は何だろう。以下、3つの要因が絡んでいると思う。
(1)中国政府がハイブリッド車をエコカーとして優遇する検討を開始
7月13日の日本経済新聞によると、中国の自動車行政を担当する工業情報化省は、「環境車規制」でハイブリッド車を「低燃費車」として優遇する検討を始めた。これまで中国は、電気自動車(EV)・燃料電池車を低燃費車として優遇してきたが、ハイブリッド車には優遇がなかった。ハイブリッド車を飛ばして、EV中心の車社会を作っていく意思を示していた。
ところがEV普及にはかなりの年月を要すること、深刻な大気汚染に即効性のある対策が必要なことから、改めてハイブリッド車も優遇する改正案が作られた。この改正案について工業情報化省は、8月上旬までメーカーや専門家の意見を聴取し、年内の決定を目指すとのことである。
ハイブリッド車技術はトヨタの独壇場である。巨大な中国市場でハイブリッド車普及が加速すれば、トヨタの受けるメリットは極めて大きくなる。これまでハイブリッド車を無視してEV開発にまい進してきた大手欧米自動車各社も、中国市場での販売を増やすためにハイブリッド車への取り組みが不可欠になる可能性もある。
ただ現時点では、中国政府が本当にハイブリッド車優遇を決めるか分からない。
(2)株主への利益配分に積極的:自社株買い枠3000億円(上限)を設定、予想配当利回りは3.1%
トヨタは株主への利益配分に積極的だ。5月8日に3000億円(上限)の自社株買い枠を設定した。過去、配当金も増やしてきた。トヨタは今期(2020年3月期)の配当金予想を公表していないが、市場予想に基づく配当利回りは7月22日時点で3.1%である。高配当利回り株として注目できる。
(3)米国が仕掛ける貿易戦争で受けるダメージは限定的との見方が出ている
Trump米大統領は日本の自動車メーカーによる対米輸出額が大きいことに不満を示している。ただし、日本の自動車メーカーは早くから米国で現地生産を拡大してきた功績があるので、日本をターゲットとした関税発動はないと考えられる。
日本メーカーにとってマイナスとなるのは、北米自由貿易協定の見直しだ。日本メーカーがメキシコで生産して米国に輸出している自動車の関税が上がる可能性がある。
逆に、米国が仕掛ける貿易戦争が日本車にメリットを及ぼしている部分もある。米国が中国や欧州連合(EU)に市場開放を迫った効果で中国やEUは自動車の輸入関税を引き下げた。日本の自動車メーカーは日欧自由貿易協定(EPA)の締結も含め、中国や欧州向け輸出の関税が下がる恩恵を受けている。