同レポートでは、RPAは「15年間の準備期間を経て、一夜にしてエンタープライズ分野で大きな成功を収めた」と述べている(名称には「ロボティック」という単語が入っているが、ロボットとの関係はない)。Benaich氏は、RPAの各業界への普及は一挙に進んでいるようだが、これは事業費の削減や新規参入企業と競争するための機動性の向上といった、企業が得られるメリットを反映したものだと指摘している。
RPA企業は多額の資金を調達している。UiPathは2018年に2回、2019年に1回の資金調達ラウンドを実施して約8億ドルを調達し、Automation Anywhereは2018年に実施した2回の資金調達ラウンドで5億5000万ドルを得た。ただし、FirstMarkのレポートでも「RPAは、少なくとも現段階においては、インテリジェンスというよりは自動化が中心であり、AIというよりはルールベースのソリューションだ」と述べられているのを見ても分かるように、RPAに関しては少し割り引いて見るべきだろう。この見解にはBenaich氏も同意している。
もう1つの重要な応用分野は自動運転車だ。Benaich氏とHogarth氏が述べているように、現在の自動運転車は数十億ドル単位の投資が必要な事業になっている。レポートでは、Waymo、Uber、Cruise、Fordなどの投資額が具体的に挙げられている。しかし、投資額が増え、カリフォルニア州などで自動運転の実験が進められているにも関わらず、一部の企業は予定された発売日に製品を間に合わせることができず、沈黙を保っている企業も多い。
Benaich氏とHogarth氏は、カリフォルニア州の住民は平均で年間1万4435マイル運転するが、2018年中に行った試験走行の距離がそれを超えるのは、63社中11社にすぎないと指摘している。Waymoは2018年中に100万マイル以上の試験走行を行っているが、これは2位のGM Cruiseの3倍近くにあたり、3位のAppleの約16倍に及ぶ。Teslaについては、カリフォルニア州車両管理局に自動運転の解除に関する指標を報告していないため、詳しいことは分からない。
ただしTeslaは、ほかの企業よりも多くのデータを持っており、競争を有利に進めていると言われている。Teslaはまた、自動車に搭載する必要があるコンピューティング能力を得るために、独自のAIチップを設計している。これもイノベーションが大きく進んでいる分野の1つであり、AIの可能性を拡大するものだ。
AI専用プロセッサー、ディープテック、地政学:中国の急速な成長
Benaich氏は、このタイミングでAIモデルのトレーニングや推論のために設計された新しいプロセッサーを開発するのは正しいと考えている。
「そう考える理由は、各業界が大規模な利用が見込まれる用途のAIモデルを導入しつつあるためだ。そうした例は、特に消費者のインターネット利用に多い。このため、プロセッサーの設計者は、顧客を明確に想定して設計を行うことができる。ただし、プロセッサーの設計は極めて資本集約性が高い事業であり、しかも長い年月をかけて培った専門的な経験を必要とする」