欧州(または英国)は、世界のAI開発研究拠点になれるか
Benaich氏は、中国は一部の面で遅れているが、そのエコシステムは間違いなく正しい方向に急成長しており、その成長を膨大なリソースが支えていると話す。同氏はまた、すでに中国の国内と国外の消費者インターネットを切り離して扱う企業が存在していると指摘する。Alibaba、Tencent、Baiduは、中国国内ではGoogle、Amazon、Facebookよりも桁違いに影響力が大きい。
このためBenaich氏とHogarth氏は、レポートのセクション1つを丸ごと中国に割いている。特別に紙面を割いているもう1つのテーマは、AIと政治の問題だ。Benaich氏とHogarth氏がどちらも英国のロンドンを拠点としていることもあり、欧州と英国の展望に関するBenaich氏の意見は興味深いものになっている。
「われわれは驚くべき変革の時代にいる。経済が変わり、政治も流動的になっている。そして、特に困難な社会的課題を解決するには、AIなどの強力な技術の助けを借りるしかない。必要なのは実際に機能し、安全で、倫理的なAIだ。欧州独自の強みはそこにあり、それが中国と米国のAIに関する対立関係を動かすてこの支点になる」
Benaich氏は、欧州のテクノロジー業界はこの10年間繁栄してきており、高度で持続可能な資金調達能力を持つ新しいエコシステムが誕生しつつあると考えている。
「このことは、今後長期間にわたって、欧州と英国のAIの命運に大きな影響を与えるだろう。現在の文脈が重要だ。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)と、米国と中国の貿易戦争が起こっている今、誰もがグローバル経済の中での欧州、特に英国の役割は今後どうなるのかと考えている。
一部の人は敗北すると見なしている。また一部の人は、2018年に施行されたEUの厳しいプライバシー規制を生かして、倫理的なビジネスで主導的な役割を果たすと主張している。しかし、現実はおそらく違うものになるだろう。英国は世界的なAIの研究開発拠点になろうとしていると考えられる。
以前は、主な原動力はオックスフォード大学やケンブリッジ大学、インペリアルカレッジロンドン、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンなどの優れた大学だった。これらの大学は優秀な人材を輩出し、それらの人材は米国のリーディング企業で働いている。しかし今は、それ以上のことが起こっている。この18カ月間、米国のテクノロジー企業は自社のAI製品を強化するために、英国のエコシステムに深く分け入っている」