矢野経済研究所(中野区)は7月25日、国内データ分析関連人材市場に関する調査を発表した。規模推移や予測、今後の動向などをまとめている。
さまざまなセンサーやスマートデバイスが普及し、膨大なデータを収集できる環境が整いつつある。人工知能(AI)やIoTなどで収集データを整理、分析し、これまでにない知見を含めた課題解決策捻出への期待が高まっているという。
案件は分野を問わずに増加。データモデル構築など、データの分析そのものに価値を見出す傾向があるという。データサイエンティストが最も重用されているが、分析コンサルタント、分析アーキテクト、プロジェクトマネージャーなど、データ関連の人材はいずれの職種でも伸びていくという。その後はデータ活用の戦略策定段階の重要性が増加し、徐々に分析コンサルタントの需要が高まっていくと予測している。
国内データ分析関連人材規模予測(出典:矢野経済研究所)
営業機密などの産業データや個人のデータを保護、活用する法環境といった制度面、大学の教育改革、小中高の新たな教育指針など、人材輩出に向けた短~中長期的な教育環境も変革といった教育面など、市場を取り巻く環境整備は両面から進んでいるという。
早急なデータ分析関連体制の構築を目指し、企業の中途採用への動きも活発化。反面、当該人材そのものが全般的に不足。社内のシステムエンジニアや理系人材などを中心に、社会人向けに再教育の場を提供、人材育成を図る“リカレント教育”の動きが活発化しているという。
希少性から年収は高騰。IT事業者、ユーザー企業問わず、人材獲得が難しいといわれるデータサイエンティストを中心に、新卒採用を求める動きもあるという。
ITや分析専業の事業者は、データ分析向きといわれるプログラミング言語「Python」など、さまざまな社内研修を整備。ユーザー企業に向けた社外研修サービスも出現しているという。
地方でのデータサイエンティスト育成に力を入れる事業者も出現し、地方で育成した人材を地元の中小企業の支援につなげるといった、地方創生を基軸とする体制構築の動きも始まっているとしている。
また、製造業や小売業を中心とするユーザー企業は、“データサイエンティストの育成”を目的とするPythonやモデリングなどの研修と、“全社的なデータ分析に基づく意思決定の浸透”を目的とする業務知見を持った現場社員などに対する簡単なデータ分析研修という、2種類を従業員に提供する傾向があると説明している。