日本オラクルは7月29日、同社のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みに関する説明会を開催した。新たに「Digital Transformation推進室」を設置し、企業のデータドリブン(駆動型)のイノベーション創出を支援していく。

日本オラクル 執行役員 クラウド事業戦略統括の竹爪慎治氏
会見に臨んだ執行役員 クラウド事業戦略統括の竹爪慎治氏によると、同推進室は「2年ほど」かけて準備を進め、2019年6月に10人規模の“少数精鋭”の組織として正式に立ち上がった。エンタープライズ向けのクラウド専任部隊や中堅中小企業向けの営業部隊「Oracle Digital」、パートナー企業などと連携しながら、同社が今後の成長戦略に位置付けるイノベーション領域の体制強化を図る。
具体的には、これまで同社がエンタープライズ領域で培ってきた強みと、IoTやAI/ML(人工知能/機械学習)、ブロックチェーン、デジタルアシスタント、AR/VR(拡張現実/仮想現実)といった新たなテクノロジーを組み合わせていく。そのためのIT基盤としては、インフラストラクチャー(IaaS)、プラットフォーム(PaaS)、アプリケーション(SaaS)をカバーするさまざまな製品を提供する(下図)。

日本オラクルが提供するDX関連のサービス群
同推進室では、「データ・ドリブンイノベーション」「グローバルナレッジ活用」「プロトタイピング」「データアナリシス」「共創」の5つを軸に据える。DXについては「データの利用や活用が必ずキーワードになる」(竹爪氏)といい、データベースをはじめさまざまなエンタープライズシステムが多くの企業で広く利用されている点が強みだとした。
さらに、米国や欧州で実績のあるアイデアの創出手法やナレッジ、アセットを日本に持ってきたり、データ分析の専門家によるエビデンスベースの支援やクラウドを活用したアジャイル開発環境を提供したりする。欧米で展開するイノベーションスペースでは、日々さまざまな課題が議論され、思い付いたその場でプロトタイプを作るといった取り組みが行われているといい、そうした手法を日本でも展開していく。

Digital Transformation推進室の概要
DXの取り組みとしては、スマートホームやスマートシティー、コネクテッドインダストリーなどを紹介。エンタープライズ領域のデジタル化だけでなく、国際連合が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)や日本政府の進める「Society 5.0」といった社会課題への解決にも取り組む。
未来の社会を顧客と共有するデモセットを用意しており、会見では、同社のデジタルアシスタントやIoTサービス、ブロックチェーンプラットフォームを組み合わせたコネクテッドインダストリーのデモンストレーションが紹介された。チャットボット経由で受注データを入力すると工場で製造が始まり、製造機器に異常が生じるとセンサーが検知して自動停止する。そして、修理に必要な部品を自動で運搬され、リアルタイムで追跡(トレース)されるという仕組みだ。
DXに関する戦略パートナーの1社であるアクセンチュアでは、イノベーション拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」にこうしたデモセットを常設展示する準備を進めており、顧客との議論に活用することを検討している。竹爪氏は「単にテクノロジーを提供するだけではなく、顧客と一緒になって新しい価値を作っていきたい」とアピールした。

コネクテッドインダストリーのデモセット。Oracle Cloudとつながり自動制御されている