スキルの選択と育成から始めるデータ分析組織の作り方--R言語を土台に体制構築 - (page 2)

輿石拓真 (ヴァリューズ)

2019-07-31 07:00

Rを使ったツール開発

 教育と同時進行で、Rを使ったツールの開発を進めました。Rは「関数」というプログラムの塊を組み合わせてコードを記述していくのですが、業務でよく行う操作を関数にしてみんなで使えるように整備していきました。例えば、データベースへの接続を簡単にできるようにしてデータの抽出を簡略化したり、期間で指定するだけでよく使うデータを抽出・集計できるようにしたりする関数を作成しました。

 Rで開発したツールはみんなが使えますし、業務が楽になるツールが用意されているということ自体がRの習得のモチベーションにつながっているようです。

 ツールを作成するには研修内容よりも、もう少し高度な知識や経験が必要になるため、当初は私1人で開発を進めていましたが、今では研修を経てRができるようになったメンバーとともに開発を進めています。

1つの共通言語を軸にしたチーム作りの成果

 プロジェクトを進めて2年、現在では10人程度のメンバー全員がRを使うようになりました。チームメンバーのやっていることが理解しやすくなり、相互にフィードバックできる環境が整いました。また、Rを軸にツール群を整備したため、作業過程をRのスクリプトとして残せるようになりました。分析結果の再現可能性も飛躍的に高まったと感じています。

 チーム構築の仕方はさまざまだと思いますが、Rという1つの共通言語を軸にすることで、多くの相乗効果を期待できます。また、Rは教育体制次第では3カ月程度で習得でき、多くの人が身構えるほど困難なものでもないようです。

 なお、われわれのチームは「Rしか使わないチーム」ではなく、「Rを軸に成長したチーム」だと考えています。Rがきっかけでプログラミングへの興味が深まり、Pythonを使い始めた例もあります。

 近年、企業で必要性が叫ばれて久しい「データドリブンな組織体制」を構築していくためにも、まずはデータ分析のスキル的なとなるRの普及に取り組んでみてはいかがでしょうか。

輿石拓真
輿石拓真
ヴァリューズ ソリューション局 アシスタントマネジャー
早稲田大学政治経済学部卒業。データアナリストとして大手食品メーカー、大手光学機器メーカー、大手証券会社など、多様な業界のデータ分析を実施。ヴァリューズ入社時から統計解析言語Rを軸としたデータ分析組織作りをおこなった経験をもとに、Tokyo.Rへの登壇や業界大手企業などへのR勉強会も開催。

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