「ポケットモンスター」のプロデュースやライセンス管理、関連キャラクターグッズを販売するポケモンは、事業用クラウドストレージとして「Box」を活用している。だが、実際は「ITリテラシーが低いスタッフも多く、ファイル共有にBoxの利用をうながしても、ZIPファイルによるメール添付が楽というメンバーも少なくない」と語るのは、オフィスのインフラストラクチャーや基幹システムなどを管理する関剛氏。
同社は知的財産権(IP)ビジネスに携わるプロジェクト単位の取引先が発生し、その相手も国内企業にとどまらず海外企業が増えているという。外部と共有するファイルもAdobe Photoshopで複数のレイヤーを持つPSDファイルや動画ファイルは数十GBとなり、手軽なファイル共有システムを必要としていた。
関氏は、7月23日に開かれたイベント「Box World Tour Tokyo 2019」に登壇。「Boxを導入するメリットと苦労した話」と題して講演した。

ポケモン 開発事業本部 システム部 兼 開発プロデュース部 テクニカルディレクター 関剛氏
それまでポケモンは「G Suite」を構成するクラウドストレージ「Google ドライブ」を利用していたが、「Google ドライブのオーナーと共有という概念は、異動や退職時のオーナー権限委譲が煩雑になる。ローカルから共有ドライブへのファイル移行時も、プログレスバーが表示されず、エラー発生時もわかりにくい。20階層、40万ファイル、1日のアップロード容量が750GBといった容量制限も不便」(関氏)だと指摘する。
また、同社には既存のオンプレミスのファイルサーバーをクラウド化させるという目的もあった。「オンプレミスは必ず壊れるし、テープからのリカバリーに要する時間やD2Dバックアップのコスト」(関氏)も課題となる。
冒頭で述べた“ZIPファイルのメール添付+パスワード”という旧態依然の手法を用いる取引企業に対して、「冗談半分で『この取り引きは考え直そうか』と社内で言っている。社内にも(ZIPファイル+パスワードスタイルを)用いるメンバーがいるものの、データの証跡を追えないなど問題が多い」(関氏)
これまで同社は、外部との取り引きにファイルを1週間だけ保持する専用のサーバーを用意してきたが、「永続的なデータ共有ができず、データ管理を煩雑にしている」(関氏)ことから、Boxへの全体移行を決めた。
オンプレミスのファイルサーバーとGoogle ドライブの代替となるBoxについて関氏は「(既存の)ファイルサーバーと同じ権限管理で使いやすい」と述べる一方で、「APIを駆使しないとウェブ経由のGUI操作が多発する。コードが書けるエンジニアを確保できればよいが、現時点で人材がいない」(関氏)ため、Active Directoryをもとにしたプロビジョニングや組織グループ名の一括変更機能を備えるMKIの「楽オペ for Box」を導入している。