日本ヒューレット・パッカード(HPE)は7月30日、ミッションクリティカル向けストレージを再定義するとした新プラットフォーム「HPE Primera(プライメエラ)」を発表した。8月8日から「HPE Primera 600シリーズ(630、650、670の3モデル)」を提供する。
まず概要を説明した同社ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部長の本田昌和氏は、これまでのエンタープライズストレージ市場の変遷を振り返り、「高速、シンプル、効率のフラッシュ時代、アジリティ、“as a Service”のエクスペリエンスのクラウド時代を経て、AI(人工知能)主導のエクスペリエンスのインテリジェンス時代になった」とし、HPE Primeraが「インテリジェントストレージ」との位置付けであることを紹介した。
「HPE Primera」の概要(出典:HPE)
HPE Primeraの詳細についてハイブリッドIT製品統括本部 製品部 カテゴリーマネージャーの加藤茂樹氏は、「Nimble Storageのシンプルさや自己管理」「Infosightによるアプリケーションの中断の予測と防止」「3PAR Storageのリスクなしで統合/高可用性&高性能」というそれぞれの特徴を受け継ぐ形で、従来は相反する要素と考えられていた「スピードと信頼性」「機敏性とシンプルさ」を高水準で両立させることを狙って設計された製品だとした。
また同氏は、HPE Primeraが“Prime(最上級)”“Primary Storage(プライマリーストレージ)”“Era(時代)”の3つの言葉を組み合わせた造語であることも紹介し、これまでのミッションクリティカルストレージの常識を破壊し、再定義するとの意気込みによる名称だとした。
HPE Primeraは、まずはHPE Primera 630、同650、同670の3モデルが投入される。モデル名の先頭にある“6”は、第6世代(Gen 6)の3PAR ASIC搭載を意味するといい、ハードウェアアーキテクチャーの観点では、3PARの後継機に相当するものになるようだ。ストレージOSも「3PAR OS」をベースに新開発したもので、基本的には3PARの新世代機に当たる。
AIによる自律型運用支援機能のHPE Infosightを搭載する(出典:HPE)
一方で、Nimble Storageから引き継がれた特徴の「シンプルさ」や「自己管理」は、3PARで提供される詳細な設定/カスタマイズの部分を省略し、あらかじめ適切な構成に設定された状態にしておくことで実現されている。一例では、利用可能なRAIDレベルがRAID6のみとされる。現時点では、今後もNimbleや3PARは継続して提供され、Primeraと併売される計画であり、従来通りの詳細な設定やカスタマイズを必要とするユーザーは3PAR、ミッションクリティカルストレージにも運用管理の省力化/簡素化を求めるユーザーはPrimeraというすみ分けになるようだ。
OSに関しては、従来の3PAR OSが機能の大半をカーネルモードで実装していたのに対し、Primeraでは可能な限りユーザーモードで実行するアーキテクチャーに変わったという。この結果、ノードの再起動回数の削減やバージョンアップの高速化、OSバージョンの品質向上といったメリットが得られたとしている。この新OSを大きな契機として、HPE Primeraでは「100% Availability Guarantee」(100%の可用性保証)が行われる。保守契約でProactive Cara以上の締結、HPE Infosightへの接続およびHPEへのデータ送付や最新アップデートの適用など幾つかの条件を伴うが、特別な契約などは不要で、仮に100%の可用性が達成されなかった場合には、顧客と協力して問題解決に当たったり、HPE Primeraの将来の購入またはアップグレードに適用可能なクレジットを提供したりするなどの対応を行うするという。
ストレージOSのアーキテクチャーも刷新された(出典:HPE)
インテリジェンスに関しては、従来はクラウドベースで提供されてきたInfosightの一部機能をHPE Primeraに組み込み、クラウド接続をしない閉じた環境で運用する場合でも、Infosightを活用できるようにした。Infosightが日々更新している学習モデルを定期的にローカル環境へダウンロードして運用する形となる。セキュリティなどの懸念からクラウドベースのInfosightに接続しないというポリシーで運用する顧客企業に対しても、完全ではないが、Infosightの機能を提供するというものだ。
この他に、ストレージメディアに関してはHDDをサポートしないオールフラッシュストレージとなっている。NVMeもサポートする予定だが、現時点で利用可能なメディアはSAS SSDのみになる。また、OSのアーキテクチャー変更に伴い、サポートポリシーも選択肢が増えた。「Short Term Support」では半年ごとにOSのバージョンアップが提供され、最新機能が実装される。「Long Term Support」では、最長3年間の長期サポートが提供され、その間に機能追加は行われず、いわゆる“塩漬け”の運用が可能になる。ミッションクリティカル環境で運用される機器に関しては、問題がない限り極力何も変更しないというポリシーで運用を継続することを望むユーザーが少なくないためだ。
サポートなどの概要(出典:HPE)
筐体内に内蔵される「コントローラノード」は、HPE Primera 630では最大2ノード、同650/670では最大4ノードまでになる。最小構成での販売価格は、HPE Primera 630の2ノード(1.92TB SSD×8)で239万1000円から、HPE Primera 670の4ノード(1.92TB SSD×16)が8744万1000円からとなっている。