DNAストレージは最初の1歩を踏み出したばかりなのかもしれないが、すべての旅は最初の1歩から始まる。Appuswamy氏とHeinis氏は、彼らだけで研究してきたのではなく、今後の開発を彼らだけで成し遂げようとしているわけでもない。OligoArchiveプロジェクトは、フランスのコートダジュール大学のリサーチャーらと共同研究を進めてきており、フランス国立科学研究センター(CNRS)もプロジェクトに関与しているため、チームは成長し、研究の拡大が可能になるはずだ。
ユーレコムとCNRS、インペリアルカレッジロンドン、コートダジュール大学のほか、DNA合成などを手がける新興企業のHelixworksは、DNAストレージに関するさらなる研究を続けるために欧州連合(EU)から資金を調達した。そのシステムは、データのエンコーディングと、該当エンコーディングデータによるDNAの合成、シークエンシングによるデータの復元というサイクル一式の自動化をサポートするものとなる。同システムはさまざまな種類のデータを格納し、ストレージ内でのニアデータ処理(NDP)を可能にするとともに、データの正確な復元を実現するものとなる。
DNAストレージに向けたさらなる研究のために、EUが資金を提供する予定となっている。
このプロジェクトは、EUのイニシアティブであるFuture and Emerging Technologies(FET)によって助成されている。同イニシアティブの目的は、特定分野のプロジェクトにおける革新的で新しい未来のテクノロジーに向けた新たなアイデアに対して、まだリサーチャーがほとんどいない極めて初期の段階で資金を与えるというものだ。これはまさに打ってつけのように感じられるが、リサーチャーらに対して企業からのアプローチもあるのではないだろうか。
Appuswamy氏とHeinis氏によると、これまでに興味を示したのは主に他のリサーチャーらであり、その例外は1社しかないという。その企業とはMicrosoftだ。もっとも、確実な何かがあるというわけではないが、今のところMicrosoftはどの企業よりも興味を示しているようだ。
DNAテクノロジー分野のブレークスルーによってもたらされる絶大な影響力を考えた場合、先行スタートを切ることは未来を手にするという意味を持っている。Appuswamy氏とHeinis氏によると、それは人々の態度にも表れているという。
「数年前であれば、人々はあまりにも現実離れしているとして聞く耳を持ってくれなかった。今日では、われわれが研究している内容を口にすると、もっと教えてほしいという感想が返ってくる」(Appuswamy氏とHeinis氏)
将来的には「もっと教えてほしい」という感想がさらに多くの人たちから返ってきそうだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。