SAP、都心にデジタル変革の共創施設を設置--日本発の課題解決を志向 - 5/5

國谷武史 (編集部)

2019-08-06 06:00

 SAPは8月5日、東京・大手町に、企業のデジタル変革に向けた共創イノベーション施設「SAP Leonardo Experience Center Tokyo」とグローバルの研究開発組織「SAP Labs Japan」を設立した。同社は日本を「課題先進国」と捉え、デジタル変革とビジネスのイノベーションによる日本発の課題解決を目指すとしている。

 新施設は、同社が2月に開設した「Inspired.Lab」と同じ「大手町ビル」の9階に開設された。Inspired.Labは同ビルの6階にある。異業種による共創イノベーションへ向けたデジタルシンキングによるアイデアの創出のみならず、それを現実のものにしていくために必要な最先端の機器や技術を活用できる設備も兼ね備える。

SAP 最高業務執行責任者(COO)のChristian Klein氏
SAP 最高業務執行責任者(COO)のChristian Klein氏

 またSAP Labs Japanは、SAPのグローバルな開発拠点の1つに位置付けられ、「SAP標準ソリューションの日本市場向け機能拡張」「イノベーションを起こしていく企業文化醸成をSAPジャパン内でさらに加速」「日本が強みとする分野における知見をSAPグローバルのソリューションの開発」を目的にしている。当初は40人体制で発足し、2020年までに80人体制に拡大させる。同社およびパートナー、スタートアップ、学術機関などと連携し、日本に合わせたエコシステムを構築していくという。

 同日の記者会見でSAP エグゼクティブボードメンバー 最高業務執行責任者(COO)のChristian Klein氏は、「少子高齢化や生産年齢人口の減少が進む世界3位の日本市場で共創によるイノベーションを生み出し、企業が“インテリジェントエンタープライズ”となるためのソリューションを世界に提供していきたい」と述べた。

 SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏は、「2020年の日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2000年に比べて45%減ると予想され、残る55%の生産性を今より80%アップさせないと競争力を維持できない。また大都市に人口が集中し、地方は過疎化して多くの自治体が消滅の危機に直面する。これは現在進行形の問題で、世界では日本が初めて直面する。日本は課題大国ではなく課題解決先進国を目指すことで、従来とは異なる世界のリーダーシップを発揮していけるだろう」と述べた。

SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏
SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏

 SAP アジア太平洋・日本地域イノベーション部門責任者 SAP Labs JapanマネージングディレクターのSinead Kaiya氏は、かつて翻訳者としてNHKの「プロジェクトX」の英訳に携わった経験を紹介。「戦後の日本の成長を支えた数々のイノベーションのエピソードに触れ、非常に感銘を受けた。日本の強みは諦めない『決意』と工夫を重ねる『創造性』の2つ。現代の日本はグローバルでつながり、デジタル技術により世界へイノベーションを発信できる」と語った。

SAP アジア太平洋・日本地域イノベーション部門責任者 SAP Labs JapanマネージングディレクターのSinead Kaiya氏
SAP アジア太平洋・日本地域イノベーション部門責任者 SAP Labs JapanマネージングディレクターのSinead Kaiya氏

 同社は、2月のInspired.Lab開設と併せ、スタートアップ企業を支援する「SAP.iO Foundry Tokyo」も発表。7~9月の第一期支援企業として、不動産分野でオフィスレンタルの情報を扱うestie、SNSトラフィック管理のFuzed.link、製造向け業務スキルSaaSのイノービア、VRコンテンツ基盤のInstaVR、人工知能を使ったオンライン面接ツールを手掛けるZENKIGENを選定した。ZENKIGEN 代表取締役社長の野澤比日樹氏は、「当社は採用面接の動画データ化とデータやAIによる面接官の育成支援を目指している。このプログラムでSAPのビジネスを学び、日本市場で閉じず世界を目指す。SAPと一緒に売ってもらえるように存在になりたい」との意気込みを述べた。

ZENKIGEN 代表取締役社長の野澤比日樹氏
ZENKIGEN 代表取締役社長の野澤比日樹氏

 一連の取り組みについてKlein氏は、「SAP自身もビジネスモデルを変えてきた。テクノロジーだけでなく、プロセスや企業文化も変革しなければビジネスモデルは変えられない。そうした姿を示さねばならない。さまざまな市場で常に多くのライバルと競合しているが、エンドツーエンドでどう変革を実現していくか。パートナーとの共創を通じた変化にフォーカスし、新しい姿を示していく」と、その意義を強調した。

360度スクリーンを配置したシアターも設置する。異業種コラボレーションによる新ビジネスの可能性を視覚的に体感することでアイデアを深めていける

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