富士通研究所は、従来の生体認証システムと同等の認証精度や処理速度で、生体情報を暗号化したまま認証できる技術を開発したと発表した。
この技術は、手のひら静脈認証を対象に、暗号化を適用する際に起こる照合精度の劣化を防ぎつつ照合処理を高速化するという。これまで生体情報を暗号化したまま認証可能な技術を開発してきたが、照合精度や処理速度に課題があった。また、従来の生体認証システムは専用線を利用したクローズな環境で運用するものだったが、今回の技術でインターネット経由のオープン環境でも利用可能な生体認証システムの実現が期待されるとしている。
利用シーンのイメージ
生体認証では、あらかじめ登録している生体情報の特徴量と、認証時に入力された生体情報の特徴量との類似度に基づいて照合を行う。今回の技術では、照合結果への影響度に応じて、コード化する領域の大きさを動的に調整することで、コード化に伴う特徴量の類似度の変化を抑え、認証精度の劣化を抑制する。
開発した技術の概要
また従来は照合処理に時間がかかっていた原因として、これまでのコード化技術は生体の画像データ全体からコードを生成していた点を挙げている。そこで同社は、生体の画像データの中で照合精度への影響が大きい領域を自動的に選択し、コード化する技術を開発することで、コードの増大を抑制し、コード化をしない生体認証技術と同等レベルの高速認証を実現できるようになった。
同技術の開発にあたって富士通研究所では、1万人分の手のひら静脈データを使用し、認証精度を検証した。その結果、コード化しない方式と比較して、ほぼ同等の照合精度と処理時間となることを確認できた。また同社が2013年に発表した、1つの生体情報から複数の特徴コードを生成できる技術を加えることで、生体認証サービスごとに異なる特徴コードを活用することや、万一のデータ漏えい対策にも有効となることも確認できた。