見通しのつかないプロジェクトに加え、プライベートでの同居のプレッシャーもあり、パニックになりそうな中野さんですが…。
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こんなとき、焦っていろいろなデータセンターの情報をかき集めて、見積もりを取りたくなるところですが、ここでちょっと考えてみてください。
データセンターの移転も、みなさんご経験のある「引っ越し」と本質的には同じです。誰でも何度かはやったことがあり、そう難しいことではないはずです。
特に単身者であれば、比較的自由に引っ越し先を決めることができます。今後の自分の生活に適したエリアを選択し、設備や利便性と家賃を比較検討しながら引っ越し先を決めます。運ぶもの、捨てるものと新居で買うものを選別し、休みのとれる日に運送業者の予約をして、荷物を梱包します。翌日からの生活のためには、引っ越し当日に最低限の荷物を開梱して、使えるようにしておかなければなりませんね。
データセンターの移転も、基本的には引っ越しと同じです。新データセンターのエリア選び、設備や利便性とコストを比較しての事業者選び、搬送するハードウェアと新しく調達するハードウェアの選定、移転日程の調整などを着実に進めていけばよいはずです。
ただし、大きく異なるのは規模です。社内システムの場合、仮に30システムが存在するのであれば、それは家庭で例えると「30人家族」のようなものです。移転の担当者は、30人家族のリーダーとなって、それぞれの都合やそれぞれの家財を考えに入れながら引っ越しの計画を立てなくてはなりません。
では、まず何から着手するべきでしょうか? 引っ越し先の検討? それより前にやるべきことがあります。実はそれは家庭や家族の引っ越しで誰もがやっていることです。
- 「彼女と結婚するので、2人暮らし用の物件を借りよう」
- 「子供2人にそれぞれ子供部屋をあげられるように、郊外でマンションを買いたい」
- 「両親と同居するので、二世帯住宅を建てたい」
- 「子供が大学に入って出ていくので、一戸建てから中心地のマンションに住み替えたい」
つまり、「今後、引っ越し先には誰が住むのか」そして「いつまで住むつもりなのか」という家族の計画です。これがデータセンターの移転先を考えるうえでの最大の要因になります。
現在のデータセンターを社内の30システムが利用しているとして、移転先ではどうでしょうか。ビジネスの拡大によりシステムが増える計画があるかもしれませんし、一方でシステム廃止、パブリッククラウドへの移行などシステムが減る計画も予想されます。
実は家族がどんどん独立していこうとしているのに、家族の意思を確認せずに大きな家を建ててしまっては元も子もありません。家族の計画、つまり、社内のビジネスやシステムの計画やイベントを確認し、一緒に新データセンターへと引っ越すシステムの母数を確認することが最初のステップです。